メモ

以下、なんとなく考えたこと・感じたことをなるべく整理した形で文字に起こして視覚化しました。ツッコミどころ満載かと思いますので、出来たら香りだけ感じてもらって、参考程度にお願いします。それっぽく書いてあっても、今はまるっきり意見が変わってるなんてことがよくあります。人は変わるからね、

練習メニューを考えるときのヒント

 

1. トレーニングの原理原則

・過負荷の原理
 体力を向上させるには、単にトレーニングをこなせばよいというわけではなく、ある一定レベル以上の刺激を与える必要があります。これを過負荷(オーバーロード)の原理と言います。普段よりも強い刺激に対して筋肉は適応し、発達します。当然に、普段身体にかかる負荷よりも低いレベルの刺激をいくら与えても、体力が向上することはありません。

・特異性の原理
 トレーニングの効果は与えたトレーニング刺激に対して特異的に現れます。したがって、トレーニングに取り組むときは目的に応じた内容で行う必要があります。これを特異性の原理と言います。(例:部位特異性、動作特異性、速度特異性、エネルギー特異性など)

・可逆性の原理
 トレーニングによって得られた効果(身体機能の 向上)は、永遠に続くものではありません。トレーニングをやめてしまえば、いずれ元のレベルに戻ります。これが可逆性の原理です。持久系トレーニングで発達した心臓や増加した毛細血管、筋力トレーニングで強く大きくなった筋肉もトレーニングをやめてしまえば、元に戻ってしまいます。ただし、可逆性があるといってもトレーニングを1日でも休んだらダメというわけでは決してなく、回復の時間を確保することも、適切なトレーニング効果を獲得する上で重要です。とりわけ、ランニングは着地衝撃からも回復しなくてはなりません。アクティブレスとだからと言って走っていては、ダメージの上乗せでしかありません。あくまでJogは回復力を高める手段であって、走っても回復しないことを注意しましょう。

・全面性の原則
 あらゆるスポーツに共通して必要とされる要素を全体的に向上させるトレーニングを行うことを全面性の原則と言います。競技パフォーマンスを高めようとしたとき、それぞれの種目特性によって重要となる体力要素や部位が異なることから、鍛えるべき体力や部位の優先順位は競技種目ごとに異なりますが、多くのスポーツ競技は全身を使います。そのため、競技力向上のためには、全面性の原則に則った全身を鍛えるトレーニングが必要です。

・意識性の原則
 何のためのトレーニングなのか、どの筋肉を鍛えているのか等、意義や目的を理解してトレーニングに取り組むことを意識性の原則と言います。指導者に言われて盲目的にトレーニングするよりも、主体的に取り組む方が効果的です。

・漸進性の原則
 漸進性の原則とは、トレーニングの内容を徐々に高度な方向に進めていくことを指します。トレーニングを継続して行っていると、目的とした体力要素が増強していきますが、この時、強くなった自分に合わせてトレーニングの強度も高めていくことが必要です。ただし、強度を高くする場合、急激に上げるのでは、怪我のリスクを高めるだけでなく、トレーニング効果を減少させてしまう可能性があるため、徐々に高めることがポイントです。

・反復性の原則
 トレーニングは、1回あるいは数回取り組んだだけですぐに効果が出るものではありません。身体機能の向上に成果が得られ、明らかな効果を実感するためには、トレーニングを規則的に一定期間繰り返し行う必要があります。これが反復性の原則です。

・個別性の原則
 個人の特質を考慮し、体力レベルや健康状態に応じたトレーニングを行うことを個別性の原則と言います。すべての人に万能な唯一絶対のトレーニングは存在しないため、個々人に合ったトレーニングプログラムを作成する必要があります。

 

2. 練習メニューの数式化

 前提として、過去だけでなく現在も、各コーチによってトレーニングプログラムの特色は大きく異なり、未だにこれをやれば上手くいくというようなトレーニングプログラムは誕生していません。それは一つに、トレーニングは二律背反(アンチノミー)によって構成されるからです。二律背反(アンチノミー)とは、二つの相矛盾する命題である定立(テーゼ)とその反定立(アンチテーゼ)が等しい合理的根拠をもって主張されることを指し、大きく3つの二律背反(アンチノミー)があるように考えます。

 

・第1アンチノミー
レースで好結果を残すためには、負荷の高いトレーニングが必要である。
レースで好結果を残すためには、身体を回復させることが必要である。

 

 レースで好結果を残すためには、高負荷のトレーニングが必要です。また、同時に質の高い休養も必要です。しかし、この二つは相容れません。高負荷な練習をすればするほど、その分身体を適切に回復させることは難しくなるし、過去に行ったトレーニングから体を完全に回復させようとすればするほど、高負荷な練習を入れる機会が減ります。 

 

・第2アンチノミー
レースで好結果を残すためには、練習量を増やすが必要である。
レースで好結果を残すためには、質の高い練習が必要である。


 練習量を増やせば練習の質は落とさざるをえないし、質を高めれば練習量は落とさざるをえません。これは第1アンチノミーにも言えることですが、全体の練習の負荷自体は、各個人によってこなせる限界が決まっていることに起因します。


・第3アンチノミー
レースで好結果を残すためには、一般的なトレーニングが必要である。
レースで好結果を残すためには、特異的なトレーニングが必要である。

 

 特異的とは、その競技にとって専門的であることを指します。反対に、特異的なトレーニングから離れれば離れるほど一般的であると言えます。例えば、1500m走者にとって、最も特異的な練習は1500mを全力で走ることになります。一方で、一般的な練習としてはペース走等が挙げられます。一般的な練習の土台の上に1500m走者としての高い能力が積み上げられていくのであり、一般的な練習は走るだけとは限りません。体幹レーニングや筋力トレーニング、バイク、水泳といったトレーニングも含まれるわけです。ここでもやはり、一般的トレーニングに重点を置きすぎると疲れ切って特異的な練習が出来なくなるし、特異的な練習ばかりやっていると強固な土台が出来ないので、ステップアップしていくことが難しくなると考えられます。

 練習メニューを考えるという作業は、この3つのアンチノミーへの応答を考えることだと言えます。ただし、大雑把に3種類に分けられるという意味であって、さらに細分化していくことは当然可能です。例えば、練習量といっても走行距離のみの意味ではありません。1000m*5の5kmとJogの5kmは同じ強度ではないですし、週間走行距離が同じ100kmの選手だとしても、週2回の練習で100km走る選手と週7回の練習で100km走る選手では、身体への負担は異なります。また、練習の質を同じにしても、restの長さが異なれば負荷も異なります。
 先述したように負荷と休養、量と質、一般性と特異性の3次元に対してそれぞれ分類が可能であり、そのそれぞれの次元がさらに細分化していくと考えると、適切な練習メニューを言語や数値で表そうとしたとき、莫大な数の組み合わせが誕生するわけです。
 そこで、前置きが長くなりましたが、これらを踏まえて練習メニューを数式化していきます。数式化するメリットとしては、シンプルかつ美しく表現できる点。言語化を試みれば軽く一冊の本になるような内容も、その数式の意味が分かる人にはたった一行で表すことが出来る。そうすれば、簡単に説明できるのではないかと考えました。
 トレーニング効果(Training Effect)をTE、負荷(Stress)と休養(Rest)のバランスをSR、量(Quantity)と質(Quality)のバランスをQQ、一般性(Generality)と特異性(Specificity)のバランスをGSで表し、それぞれa、b、cを定数とするとき、
TE = aSR + bQQ + cGS
が成立し、TEが最も高くなる練習メニューが理想的だと言えます。(考え方によっては、さらに細分化もできると思います。)
 3つのアンチノミーにおいて、それぞれ優先順位が異なる以上、定数をかけて調整しなければなりません。そのための定数a、b、c。しかしながらこの数式には、時間という概念がありません。レース100日前と10日前では負荷と回復の最適解は自ずと異なりますし、トレーニング原則より一般性から特異性へと重要度は傾いていきます。
例えば、アキレス腱を痛めているとしましょう。レースまであと10週間。こんなとき。
 「レースまでまだ時間がある。TEを最大化するためには故障を長引かせることだけは避けなければいけないのでaはb、cに比べて高くなる。GS(一般性と特異性のバランス)の最適解は一般性の優先度の方が高くなる。SR(負荷と休養のバランス、ここでは患部の状態を悪化させるリスクと回復にかかる時間)とGSの兼ね合いから、アキレス腱を回復させながら一般的なトレーニングを行おう。したがって、具体的にはバイクや水泳をやりつつ、中強度程度の持久走を取り入れていこうか。」と。そんな感じに考え得るわけです。
 数式化することによって、優先順位が明確になるので迷いが減るような気がしています。数式化によって自動的に最適解が導かれるわけではないですが、物事をシンプルに考えることが可能になったように思います。ただ、もっといい方法があるはず。

 

3. 「量」と「強度」のバランス

 中でも、長距離走においてトレーニング効果を決める2大要素は「量」と「強度」である言えるでしょう。つまり、トレーニング効果(Training Effect)は量(X)と強度(Y)の2変数関数で表されると言えるわけです。一番簡単な形にするとTE=AX+BYでしょう。XとYにかかる定数A、定数Bは個人の特性やトレーニング歴によって変わりますし、この数式には時間が存在しないので時間が経つことで定数が変わりうることもあります。
XとYを高めた分、トレーニング効果もそれに伴って高まります。しかし、強度にせよ、ボリュームにせよ、増加が大きくなるに従い得られる恩恵の割合は小さくなります。まったく走ってない状態から月間200km走ることは大いに効果がありますが、月間800kmから1000kmに増やしても前者ほどの効果はないということです。故に、仮に視覚化するなら対数関数のグラフがしっくりくるでしょう。


 したがって、TE=AlogX+BlogYと仮定します。
また、無限にトレーニングをこなせるわけではないので、かけられる負荷は有限であることから、X×Y=C’ (C’≦C)という式を導き出すことができます。Cはこなせるトレーニングの限界値で、C’は実際にトレーニング負荷。正しいフォームを身に付け、身体を強くすることができればトレーニングの絶対量Cの値は大きくなります。回復効率が高まり、競技に対するモチベーションが高まればC’の値もCに近づくでしょう。
 すなわち、TE=AlogX+Blog(C’-X)というように、Yを消してXだけの式を表すことができるわけです。
 以上が、トレーニング効果を表す式です。長期的にはこれを時間で積分したものが実際の効果になりそうです。
 トレーニング効果を最大限高めるには、Zが最大となるようなXを設定することが肝要です。前述したように、定数も時間とともに変動するので、Xの取り方も変わってくるでしょう。
 便宜上、A=15、B=5、C’=40のグラフを作成しました。


 X=30前後で最大値をとります。
 最大値あたりではほとんど値が変わらないのに対し、遠ざかるに従って効果の落ち幅は大きくなっているのがわかります。Jogしかしない練習では数値は小さくなる(練習効果は低くなる)し、だからといってダッシュのような練習のみでも数値は小さくなる(練習効果は低くなる)と説明すると分かりやすいかもしれません。一方で、おおよそ原則にのっとっているトレーニングであれば、ほとんど効果は変わらないこともわかると思います。
 では次に、C’=40とよりトレーニング負荷の量を高めたC’=50とで比較していきます。


 以上のグラフからは以下のことが読み取れます。
・トレーニング負荷を高めても、方針を間違えると低い負荷よりも効果が得られない場合がある。
・トレーニング負荷が高ければ、おおよその方針が正しいだけでトレーニング負荷が低い場合よりも効果は高い。
 この点、定数C‘が変わっておらず(変わらない前提で考えて)、グラフの最大値を見つけることにだけ躍起になることは、強くなるための手段として非合理になっている可能性があるということがわかると思います。
 それも大切ではありますが、TEを大きくする手段としては、
①正しいフォームを身につける、身体を鍛えるなどでトレーニング負荷の絶対量Cを高めること。
②回復効率を高める、モチベーションを高く持つなどでC’を可能な範囲内で高めること。
③高いC’を維持しつつ、Zが最大となるようなX(Y)を見つけること。
の3点であると言えます。

 レベルが高くなるにつれて定数A、Bは小さくなり、C’も限りなくCに近くなるため、③の段階が重要になります(特にボリュームにかかるAは小さくなるはず)。現状の定数A、B、Cを自身で推察し、その値や伸びしろ、自身の置かれた状況から判断して、どのプロセスに注力すべきかを考えるのがトレーニングの醍醐味といえるでしょう。

 

4. 多様な練習を組み合わせる理由

 長距離選手におけるトレーニング構成は基本、ポイント練習はレペティション、インターバル、ペース走の組み合わせです。それを週2~3回行い、その他、間の日や朝はJogをするのが一般的です。ではなぜ、多様な練習を組み合わせてトレーニングプログラムを組むことが一般的なのかでしょうか。
 この点、回復周期が大きく影響すると考えられます。そもそも筋肉には「超回復」と呼ばれる現象があります。トレーニングで筋肉が壊されると、時間をかけて修復され、やがて壊される前よりも高い能力を持つ筋肉がつくられるといったものです。この現象によって、トレーニングと休養を繰り返すことでパフォーマンスが向上すると考えられています。この点、逆に、回復が不十分なまま次のトレーニングを始めてしまうことを繰り返していると、かえって筋肉の能力が低下してしまうだろうと考えられています。もちろん、回復に必要な時間は筋肉によっても異なりますし、どの程度壊されたか等、個人差もあるわけですが。
 また、「超回復」は筋肉だけでなく、循環器系や心血管系でも同じ理屈で考えることができます。LT以下のペース、例えばゆっくりLong Jogを行う際、速筋はほとんど動員されません。一方、LT以上のペースで練習すると速筋が多く動員されます。速筋はすぐ疲労してしまい、回復に時間がかかりますが、遅筋は回復にさほど時間はかかりません。したがってポイント練習とポイント練習の間にJogを行えば、速筋を回復させつつ遅筋も維持できるというわけです。心肺機能についても同様です。心肺機能は基本的、回復が速いが衰えるのも速いので、毎日走ることが望ましいです。しかし、酸素負債を伴う練習では血液のpH値が下がってしまい、これが元に戻るまで時間が必要とされます。したがって、酸素負債を伴う練習を連日行わず、間の日にJogをすることが望ましいと考えられています。
 しかしながら、私たちは常に、タイムトライアルを頻繁に実施するトレーニング効果を上回るような、トレーニングをこなすことができているか考えなければなりません。もちろん、課題は分割し、修正したのち、能力を再構成するべきとの見解から、タイム向上のボトルネックになっている部分を効果的に改善できないとする考えや、特異性の高いVO2maxは強化できても、スピード(解糖系)を強化するにはペースが遅く、LTを強化するには時間が短く、全体として非効率となるとの考えがありますが、一概にタイムトライアルを上回るようなトレーニングができているとも言い切れないのではないでしょう。

 

5. トレーニング負荷の変動

 仮に1週間あたりのトレーニング総負荷は同程度だとしたとき、1日あたりのトレーニング負荷が大きい場合と小さい場合(走る日と走らない日の負荷の差が大きい場合)では、リターンないし故障リスクは変化するだろうと考えられます。(リターンはあまり変わらないかも。)
 トレーニング負荷は変動の大きさが刺激になり、その疲労から回復することで適応します。しかし、負荷の変動が大きすぎる場合、刺激が強すぎて(リカバリー不十分で)故障や不調に繋がりやすいでしょう。反対に、負荷の変動が小さすぎる場合、故障リスクは少なくとも、リターンはそれなり止まりでしょう。したがって、トレーニング負荷の変動は大きい方が良いですが、適切な幅があると考えられます。変動幅に関しては、スピードタイプが大きく、スタミナタイプが小さく設定するのが一般です。また、年齢を重ねれば重ねるほど変動幅を小さくした方が良いように感じます。ジュニア期のアスリートはトレーニング負荷にメリハリをつけて、変動幅を大きくしてあげた方が伸びる傾向にありそうです。
 実際に近年では、トレーニングの組み合わせや時間帯など、トレーニング処方の効果を検証する研究も増えてきています。例えば、「毎回休まずトレーニングを繰り返した場合」と、「休日を1日挟み、その代わり1回のトレーニング量を2倍にして継続した場合」のトレーニング効果を比較した研究では、どちらも1週間のトレーニング量は同程度になるわけですが、1日おきに2倍トレーニングを行った場合の方が、脂質代謝能力の亢進、安静時貯蔵グリコーゲンレベルの増大、持久性パフォーマンス向上等、持久性能力に対する効果は高い可能性が指摘されています。
 また、自転車追い抜きのドイツチームは、LT以下の低強度運動と血中乳酸濃度が10mmol/Lにも達する超高強度の運動を主に行い、レースペースに近いOBLA強度付近のトレーニングをほとんど行っていないことが報告されています。ケニア人ランナーのトレーニング分析でも、高強度トレーニングを取り入れている群の方が、LT付近の持久走を主に行っていた群よりもパフォーマンスが高かったことが報告されています。これらの報告は、中強度のレースペース付近の運動よりも、高強度の運動と低強度の運動を組み合わせることで、ターゲットとなる中強度のパフォーマンスが向上する可能性を示唆しています。

 

6. 練習メニューの匙加減

 練習メニューを処方する際、基本的には最初に理想のメニューを作って、そこから下方修正する形を取ります。日々、実際の反応を見ながら、できないと判断したらその日の内容を修正したりだとか、高強度練習自体をスキップしたりできると良いでしょう。実際に研究としてトレーニング実験を行うと、良いとされているトレーニングを被験者に処分したとき、被験者全体の平均としてはパフォーマンスが向上します。しかし、それはあくまで全体の平均であって、個人の変化をみるとパフォーマンスが変わらない人も出てきます。そういう人らをノンレスポンダーと呼ぶのですが、そうなる原因の1つとしては、処方としてトレーニング量や強度がノンレスポンダーの個人にとって足りていないという可能性が考えられます。ある研究ではノンレスポンダーだけを抜き出してトレーニング量や強度を上げて再び処方すると、パフォーマンスが向上したことを報告しています。つまり、トレーニング効果を正しく生み出すには、その個人にとって十分にきつい負荷を与えるということが重要ということです。一方で、負荷が高すぎる練習をずっと続けるとオーバートレーニングになったり、精神的に疲弊したりします。そこで、疲労を適切にモニターし、十分に追い込むが一線を越えないという練習メニューの匙加減が大事になってくるわけです。
 当たり前ですが、誰もが超絶速くなる、一撃必殺、逆転サヨナラ満塁ホームランみたいな練習は存在しません。トレーニングに数字があるとするならば、提示している(されている)トレーニングは100%なわけありません。そのため、画一的に練習メニューの匙加減を調節するのは困難なわけです。したがって、このとき、練習メニューの匙加減を意識する場合には、選手自身が絶えず自分で考え、各々の取り組みで練習メニューを目的に沿ったものに書き換え、100に近づけようとする姿勢が必要です。選手一人ひとりの能力が違う以上は自分で課題を把握し、自分で組み立てていく力が求められるでしょう。自分の身体を一番よく知っているのは選手自身なので、選手の意見や感覚と指導者の経験則や感覚、さらに客観的なデータもすり合わせていくことで正しいものに近づいていきます。このようにいろいろな情報をすり合わせて正解に近づこうとするときには、選手自身が自らの状態を把握し共有できる力がないと難しいでしょう。(コーチの役割は、この状況下で、対象を理解してその子の最適解を見つける作業を一緒にすることです。)
 この点、個人に合わせた指導を行う場合、練習メニューの匙加減という観点においては優れているように思います。一方で、個人に合わせた指導と言うと聞こえが良いのですが、実際、ジュニア期にそれで強くなる選手は統計的に少ないように感じています。目的意識が高い選手ほど成功する確率が高いですが、この目的意識を持つことに気づかない選手も一定数います(結構多い)。とりわけ、中学時代にそれなりの成績を残してきた女子選手のほとんどは、熱心な指導者の下でとりあえず走らされていて、やらされる中で気づいたら速くなっていたというケースがほとんどです。(この点、繰り返しになりますが、コーチの役割は、対象を理解してその子の最適解を見つける作業を一緒にしていくことであり、各々が考える理想に近づけるよう背中を押す指導をすることなので、こうしたケースにおいては、適宜コミュニケーションをとりながら対応していくことが求められます。)
 ただ、そのような立ち回りをする指導者(コーチ)がいないために、困ったちゃんな場合がほとんどでしょう。この時、考えられる対応策の一つとして、部内にたくさんの指導者を養成していくことがあります。例えば、練習内容は競技経験豊富な上級生部員中心にメニューを組み指示する担当チームを作り、その日の担当者が指示をする。実施したメニューについてはすべて報告してもらい、みんなが後日確認できるように残す。このように学生が主体的に指示する機会を得る仕組みを作ることで十二分に補うことができると思います。結果として、部員同士の関わりの中で、練習メニューの匙加減も各々に合わせて上手く調節できるようになる(しやすくなる)のかなって思ったりします。