メモ

以下、なんとなく考えたこと・感じたことをなるべく整理した形で文字に起こして視覚化しました。ツッコミどころ満載かと思いますので、出来たら香りだけ感じてもらって、参考程度にお願いします。それっぽく書いてあっても、今はまるっきり意見が変わってるなんてことがよくあります。人は変わるからね、

Jogについて

 

Jog(理論編)

1. ダニエルズによる分類【イージーランニング(Eランニング)】

 EはEasyの略で、VO2maxの約59~74%、HRmaxの約65~78%程度を指します。1回あたりの練習量は30分~150分が目安とされます。Eランニングの目的としては、「怪我に対する耐性を作ること」、「心筋を発達させること」(心収縮力が最大に達するのは、約60%HRmax)、「血液の酸素運搬能を改善すること」(毛細血管新生(活動筋に酸素を運搬する微細な血管)が促進される)、「筋線維をランニングに有利な性質に導くこと」(活動筋自体がランニングに適した特徴を備えていく)等が挙げられます。
 Eランニング中でも、心臓は多量の血液と酸素を活動筋に運搬しています。そして活動筋は筋線維の変化という形でそれに反応します。これにより、筋肉はさらに多くの酸素を受け取ることができるようになり、一定時間により多くの燃料をエネルギーに転換することが可能になります。このプロセスで得られる効果の多くは、筋線維に刺激を与えた時間が長いほど大きくなるため、Eランニングにおける練習効果は運動時間に依存すると言えるでしょう。
 私の感覚では、Eペースの範囲が広いように感じています。そこで、Eペースの中でModerateとEasyに分け、Easyの下位概念としてV-EasyとShakeoutを設けるとわかりやすそうです。リカバリーランに関してはほぼEasy以下で、持久力と筋力の向上及び動きを作る目的のケースでは、Moderateに近い強度の刺激を多くとりたいところです。Jogをペースごとに細かく分類することで、より負荷が一目でわかりやすくなるでしょう。実際にJogのペースはかなり人によるので、一概に最適なペース(負荷)を決めることはできません。普段から3:40/kmで走っちゃう人もいれば、4:30/kmより遅い人もいるので。

 

2. Jogの負荷の計り方

 Jogは時間ベースか距離ベースか。負荷を強度(スピード)×量と定義したとき、量とは「時間」を指すのか、「距離」を指すのか。すなわち、Jogを時間目安でやるか、距離目安でやるかです。仮に、走る時間を一定にしたとき、スピードが上がると距離も増えます。同様に、走る距離を一定にしたとき、スピードが上がると時間は減ります。前者は負荷ましましですが、後者は負荷一定?骨格筋への生理学的刺激においては、その運動強度に応答した身体機能が働いている時間(運動刺激を受ける合計時間)で負荷が決定すると考えられるので時間目安。地面反力起因の力学的負荷が作用する回数においては、距離目安(正確には歩数目安)。
 ダニエルズは、「トレーニングはどんな強度でも、走った距離ではなく時間で考えたほうがよい。」と言います。ある決まったタイプの練習をする場合、能力の違う選手たちを同じ様に指導するためには、練習した時間で管理するのが良い方法と言えるでしょう。

 

3. Jogの効果

 乳酸濃度が上昇しないペースである程度の時間(20'~80'程度)走り続けます。Jogはエネルギーのほとんどを有酸素系で賄うことから、期待される効果として、①心筋と活性化された骨格筋細胞内の酸化系代謝能力が改善化されることがあります。ランニングに使われる骨格筋細胞では、遅筋中のミトコンドリアが大きくなり数も増えることで、筋肉に供給される酸素を利用できる割合が大きくなり、エネルギーの貯蔵量も増加します。トレーニングによって筋肉中の血液量が増えて毛細血管密度が増加すれば、O2の運搬とCO2の除去に関しての改善も見られます。このように有酸素系の能力全般が向上することで回復力がつき、練習を継続できるようになります。また、Jogを通して、②速いペースで起きるような過度な接地ストレスなしに、関節や腱を強くすることが出来ると考えられます。結合組織を強くする刺激として役立つでしょう。加えて、Jogのような長い距離のトレーニングは、③心臓に戻る静脈血が心室を大きくする刺激を与える効果ないし心拍出量を増やす効果をもたらします。トレーニングにより筋肉及び呼吸循環器の機能が改善されれば、④ある一定のペースを維持するのにより少ない疲労で済むことになるでしょう。ランニングで中心となって働いている筋の機能が改善されたなら、他の補助的な筋肉への負担は減っていきます。故に、⑤より少ない筋活動で済むためO2の消費が減っていきます。さらには、⑥脂質をエネルギーとして代謝する能力も向上することで、グリコーゲンを節約することができるようになり、余分な体脂肪も落ちていくでしょう。これらの効果が合わさった結果として、⑦ランニングエコノミーの向上にも繋がります。
 「Jogのような低強度大容量のトレーニングは、神経系の慢性的疲労(or 適応)に伴い、遅筋線維の選択的利用、糖から脂質へのエネルギー基質の移行、主に遅筋線維の毛細血管密度とミトコンドリアの増加等により、同じ容量の高強度トレーニングに対する強度を下げ、疲労を減少させる。」のような認識で良いでしょう。
 個人的な感覚ではefficiencyを高める効果も大きいように感じます。ランニングエコノミーというと、幅広くランニングの経済性を指します。実際に消費エネルギー対移動距離の比率を意味しますが、これには運動生理学的側面とバイオメカニクス的側面の両方の寄与、また、それ以外の寄与もあり得ます。ミトコンドリアの機能が高まって、消費カロリーのより多くを移動のための仕事に変換できるようになっても、神経系の改善により発揮できる筋力が大きくなっても、SSCサイクルを活用できるようになっても、単純に体重が落ちるだけでもランニングエコノミーは高くなったことになります。ここでいうefficiencyとは効率、「合理的な身体運動を行うことによるエネルギーロス(=ブレーキ成分)の少なさ」という、より狭義の効率の良さを指すものとしてランニングエコノミーと区別します(勝手に)。長距離では運動時間が長いためにエネルギー消費を抑えなければ走りきれない(グリコーゲンのカロリーだけでは賄いきれない)ことから、エネルギーロスを小さくする努力が必要となります。そこで、ジョグの中で、ブレーキの生じる力みが起こらないようなリラックスした動きでゆっくり走ることで、ブレーキをかけないような動作を身体に覚えさせていくことが大切だろうと考えています。コンディション確認の意味合いも大きいです(個人的には、)。

 

4. Jogの位置づけ

 Jogの位置づけは各々の置かれている状況や特性によって異なります。Jogはそれほど強いトレーニング刺激ではないため、一般にトレーニング復帰の最初(メゾ周期x0)はこのトレーニングを中心に取り組むべきです。呼吸循環器及び骨格筋の両方に重要な適応をもたらすことになるでしょう。その後のメゾ周期x1~x3にかけてでさえ、Jogは全体のトレーニング量のかなりウェイトと占めますが、試合期が近づくにつれ徐々に優先度は下がっていきます。これはJogの位置づけが、トレーニング負荷をどのように分散させるかに依存するからです。期分けの中で、どの時期にどんなトレーニングが必要で、必要なトレーニング負荷を確保するためにJogをどのように利用し調節するかで、位置づけは異なってくるというわけです。現状に合わせて要素分解して考え、色んな要素を考慮した上で、ベターな選択をしていくことが求められます。故に、Jogが大事だからといっても、一年を通して過度に重視する必要もないと思います。結局のところ走力はポイント練習で引き上げるのであって、間の日のJogはそのための土台をつくるためのものといった感覚で十分でしょう。

 

5. 走力を最大化させる走行距離の最適値

 走力を最大化させる走行距離が存在すると仮定した場合、その最適値は個人によって異なります。なぜなら、走力や資質が同様だとしても、個人の競技特性は異なるため、それに応じてアプローチを変える必要があるからです。最低限必要な有酸素系能力を維持するのに必要なトレーニング量は、筋線維組成比率等の影響で異なってくるということです。強度や負荷には適正な比率があり、その結果、必然的に走行距離は、高強度や高負荷の距離が少ないスピードタイプの方が短く、多いスタミナタイプの方が長くなるでしょう。
では、個人の最適値より多い場合、また、少ない場合には、どのような弊害が考えられるのでしょうか。


・多い場合:
高強度練習において、十分な負荷をかけることができなくなることが考えられます。すなわち、高出力を出しにくい神経-筋状態となり、心肺機能への刺激が低下する恐れがあるわけです。また、努力感向上による走りの力みや崩れが生じ得るでしょう。


・少ない場合:
有酸素系への刺激が不足し、ベースとなる速度(LT等)が遅くなることが考えられます。また、骨格筋の強化不足により、高強度練習の負荷に耐えられない身体になってしまう。すなわち、故障や回復力の低下に繋がり得るでしょう。


 ただし、おそらくほとんどのケースで最適値より少ないと考えられます。


*「回復力」:

 一般には身体組織の機能回復能力のことを指すのだろうと考えられます。あらゆる負荷や強度のトレーニングからの回復の早さこそが回復力であると言えそうです。間が短い場合はVO2maxやLTに、長い場合は有酸素系の代謝能力に依存する傾向が強いでしょう。ただ、主観的には回復力と感じているものが、神経系の調整によって節約されている面も大きいことが考えられます。トレーニングに対する疲労回復が早いと感じている場合でも、実は回復力が高いというより消耗度合いが低いという可能性もあり得ます。

 

6. 走った距離は裏切らないのか

 才能と努力。対にして使われることがありますが実際は対ではありません。手放しに才能を讃える行為は、努力を諦めた者が、圧倒的な能力を持つ者を神格化し、努力しない自分を正当化するためのものであると言えます。本来、努力とは手段です。何かしらの結果を出すという目的があって初めて生まれる手段です。そんな手段でしかない努力がいつの間にか「努力することそのもの」が目的にすり替わってしまうことがあります。現状、結果を出した人に対してしかその努力が賞賛されることはなく、また、結果を出している人の方がその努力に対する評価も高いものになりやすいでしょう。努力は数値化出来ません。評価するには基準が曖昧であるため、結果の影響を受けるのは仕方がないものです。そんな努力を数値化しようとすると目的に変わってしまいます。「今月は1000km走ったから満足!」というように。1000km走ってその分練習効果を得られたのならそれで問題ないですが、500km走ったときと練習効果が変わらなければ、それは無駄な努力だったと言えます。集団としても、友達が月間1000km走った場合、凄いと評価してしまうことでしょう。確かに月間1000km走ってめちゃくちゃ速くなったら凄いと思いますが、月間1000km走って怪我をしたら言わんこっちゃないとなるべきです。結果として起こりそうなことを予測しつつ、上手く結果が出そうなやり方を逆算的に模索し、それを実行していくのがあるべき姿だと思うので。
 つまるところ、努力が手段であることを忘れ、盲目的に努力することが目的になってしまうと、いつの間にか目指していた場所と違う所に来てしまっていたなんてことも大いにあり得る話です。「走った距離は裏切らない」という言葉は、走った距離に裏切られなかった人だけに使うことが許された言葉なのであって、それを聞いて、「たくさん距離を走れば速くなる」とか「努力は報われる」と思い込み、努力にフォーカスしすぎることはあまり好ましくないことだということを強調しておきます。

7. 朝Jog

 トレーニングの時間帯に着目すると、一晩絶食時間を挟む朝Jogは、体内の貯蔵グリコーゲン量が減った状態でのトレーニングであり、持久性トレーニング効果は高いと言えます。
 体内に貯蔵された糖質の状態は時間経過、行動パターンによって絶えず変化します。通常の生活を送っている場合、朝食前は1日の最も長い絶食後の時間帯となり、身体は貯蔵グリコーゲンレベルが低下している状態となります。この時間帯に運動する朝Jogでは、食後3~4時間経過した午後や午前の練習に比べて、同じ速度で走っても脂質代謝がより亢進することが明らかになっています。このように脂質代謝を高めることが出来れば、運動時の脂質利用能力の改善等、持久力に関わる能力が高まるわけです。(したがって、朝食前でなくても、昼食をとらないで夕方に空腹状態で行う運動でも同様の効果が期待されます。ただ、早朝時よりも脂質代謝は亢進せず、これには絶食時間以外の要因(日内変動など)が関与しているものと考えられます。)
 また、運動量と食事量を統一して1日のエネルギー代謝量を比較した場合、朝に運動した日は、その他の時間帯に運動する日よりもエネルギー源として使われる脂質が大きく(反対に糖質は少なく)なることが明らかになっています。このことは余分な体脂肪の減量につながると考えられます。ただし、早朝の空腹時には、血糖が低いため運動意欲が低かったり、体温が低い等の問題もあります。同時に睡眠中の発汗作用によって、体水分量も減っています。したがって、なにがなんでも勧められるわけではなく、持久力向上や減量を目的とした場合のJogであっても、いきなりたくさん走るのではなくて、少しずつ朝Jogに慣れていくのが良いと言えるでしょう。(早朝の空腹時における運動は、AMPKの活性化を介して骨格筋ミトコンドリアの適応を高めると言われていますが、筋グリコーゲンが少ないことから朝に強度の高い運動は行いにくいので、仮に2部練を予定している場合は、朝軽めに走って、栄養補給を挟んだのち、高強度運動の流れが理想です。)

 

Jog(実践編)

1. LSD(Long Slow Distance)

 LSD(Long Slow Distance)とは、ゆっくり長い距離を走るトレーニングの一形式を指します。一般に、会話を続けられる程度の十分ゆっくりしたペースで走るべきであると言われています。Jogの効果は運動時間に依存することから、基本的には先述のJogの効果を大きく享受することができると期待されます。(もちろん、同時間の運動であれば、速いペースで走る方が呼吸循環器及び骨格筋への刺激は強いため、効果はあります。)
 低強度で行うLSDは、あまりトレーニングを積んでいないランナーにとって非常に効果的です。一方で、よくトレーニングを積んだランナーにとっては有酸素能力を構築する上で、最も有効な練習とは言い難いでしょう。5000m~10000mを目指すランナーが練習としてLSDを取り入れる際には、90~120分程度で十分かと思います。(体感、120分以上の運動にさほど魅力を感じない。)練習効果というよりは、おしゃべりしながら走ることを楽しむという意味合いが強くなるでしょう(これが超大事)。無論、90~120分程度であればLSDではなくなりますが、そこそこのペースにまで上げたり、様々なペースを組み合わせて変化をつけたりする工夫もありです。

 

2. ペース変化をつけるJog

 Jogの範囲内でペースを上げる練習です。最初は通常のJogのペースで走り始め、徐々にペースを上げ、最後は全力に近いペースにまで移ります。イメージとしては、ファルトレク(3.4.4)に近いです。この練習は他の練習で代替可能かつ、優先順位も低い練習で、目的がいまいちはっきりしないため、使いにくいという面があります。予定されたポイント練習をこなして、間の日は心地よいジョグを繋げばそれで十分です。
 一方で、幅広い速度帯で走ることで、筋肉や呼吸循環器系に多様な刺激が入ることがメリットとして挙げられます。「疲れているつもりが走り始めたら絶好調」なタイミングを逃さずに、疲れたままなら即やめるというような意識が、練習を最大量詰め込むために実は必要なことだったりするかもしれません。

 

3. Jog+α

 十分なJogを行ったのち、+αとしてスピード刺激を入れる工夫があります。冬季練習等、なかなかスピードを出す練習を組み込みづらいタイミングにおいて、短めのインターバルやレペを取り入れると、忘れがちになってしまう速い速度帯での動きを思い出すことも出来ます。+αの部分で強度を調節することができるため、週間サイクルにポイント練習換算でJog+αを組み込むと、何かと応用が利いて便利な印象です。+αに部分は無限に変えられるので飽きないですし。次のメゾ周期への移行もスムーズに行えます。もちろん、+αの部分を固定して、結果の推移から適応具合を計る尺度として用いるのも良いでしょう。