メモ

以下、なんとなく考えたこと・感じたことをなるべく整理した形で文字に起こして視覚化しました。ツッコミどころ満載かと思いますので、出来たら香りだけ感じてもらって、参考程度にお願いします。それっぽく書いてあっても、今はまるっきり意見が変わってるなんてことがよくあります。人は変わるからね、

女性アスリートについて

 日本のスポーツ指導は、男性アスリートを育てる中で構築された方法論に基づいています。それがそのまま女性アスリートの指導に用いられているため、女性特有の生理現象を考慮しているとは言い難いのが実情です。その結果、月経異常や骨粗しょう症等の重大な健康被害を引き起こしてしまうケースも多いでしょう。「生理なんてない方が楽」と考える選手本人や指導者もいるかもしれませんが、それは大きな間違いで、女性アスリートが強くなる、能力を十分に発揮するためには「女性として健康な体」であることが欠かせません。強く、速く、また、美しくあるために必要な筋肉も骨も心肺機能も、女性の場合は女性ホルモンの影響を受けます。故に、女性の身体の特性を理解して女性アスリートのコンディションを調整し、競技力を高めていくことが重要なわけです。女性アスリートはあくまで女性なのであって、男性のミニチュアではないことを強く意識しなければなりません。

 

 

1. 心理的特徴

 以下、あくまで傾向にとどまる話であって、全員が全員すべて当てはまるというわけではないという点を強調します。

① モチベーションの高まり
男性アスリートは、試合で勝ったときに「もっと頑張ろう」「一生懸命練習しよう」というモチベーションが高くなりますが、女性アスリートはそれほど高くなりません。一方で、女性アスリートのモチベーションが上がるのは、指導者や両親、仲間等から励まされたり認められたりしたときです。誰だって勝てば嬉しいし、認められるとやる気が出ますが、その重さは男女で異なる傾向にあります。


② 競技力向上に対するモチベーション
男性アスリートはうまく動機づけ出来たら、バーッと突き進むイメージです。一方、女性アスリートは一緒に頑張っていくとか、この人に認められたいから頑張るという感情が強いのだろうと感じます。五輪や世界大会を見ていても、男性アスリートは優勝した時ガッツポーズをしますが、女性アスリートは指導者の元へと駆け寄る光景をよく見かけます。監督に認めてもらいたいという気持ちが原動力となって練習する傾向にあると言えるでしょう。なおのこと、女子選手の場合は信頼関係が破綻してしまうと練習になりません。


③ 練習への取り組み
男性アスリートはある程度メニューに自由度を与えるとレベルや目的に応じて自分で応用を始めますが、女子は余計な味付けはせずに忠実に再現しようとする傾向にあります。また、男性アスリートは自らでメニューをレベルに応じて勝手にステップアップさせていきますが、女性アスリートは「今はこういう練習(指示)だから」と指示なしに応用していこうとはしない傾向にあります。

 

④ 指導者との繋がり
男性アスリートは詳細に指示し、忠実に再現させようとしすぎると窮屈がるので、ある程度自由度を与える必要があります。一方、女性アスリートは男性アスリートのように自由度を与えすぎると、めちゃくちゃになってしまうことも多く、難しいでしょう。コーチ受容性(指導者の言葉を素直に受け入れる傾向)の高さは女性アスリートの特徴の1つと言えます。厳しい言葉で叱りつけた際、男性アスリートは聞き流せても、女性アスリートは激しく落ち込むことも多くあります。また、「自分が失敗して負けたらどうしよう」「怪我をしそうで怖い」という恐怖心や不安感も、女性アスリートの方が強く感じる傾向にあります。

 男性(女性)指導者が女性アスリートの練習や試合の結果に対して、「今日はここがだめだった」、「もっとこうしたほうがいいぞ」等と、ダメ出しや勝手な持論を、だらだらと展開している姿をよく見かけます。もちろん、このようなコーチングが必要な時もあるでしょう。しかしながら、元来、女性は男性に比べて自己評価が厳しく、自分自身を低く見積もる傾向が強いことからも、女性アスリートに対しては、いつも良かったところを伝え、今日のパフォーマンスないし毎日の努力を認めてあげることが必要でしょう。

 

2. 身体的特徴

 言うまでもありませんが、男性と女性は平等ですし、優劣はありませんが、生物として男女を見たとき、それぞれ異なった特徴をもっていることは事実です。男女の違いが顕著になるのは、大体14歳以降と言われています。12歳くらいまでは、身長や体重に性差はほとんど見られませんが、思春期になると男子の方が身長も伸び、体重も増え、体型もがっちりしてきます。女子は胸が膨らみ、丸みを帯びた体つきになって、月経(生理)が始まります。
 中でもアスリートとして知っておくべき男女の違いは、①筋肉量(女性の筋肉量は男性より少ないこと)、②脂肪量(女性の脂肪量は男性より多いこと)、③妊娠・出産(女性は月経があり、妊娠・出産できること)です。これらに影響を及ぼしているのが女性ホルモンです。思春期から閉経期までの女性は、骨や筋肉、内臓にまでも女性ホルモンの影響を受けています。男性と女性では、なりやすい病気も、よくある怪我も、平均寿命さえも違います。それらは女性ホルモンの影響を受けている結果なのです。
 男性ホルモンは、筋肉をつけたり、脂肪を燃焼してエネルギーに変えたりする効率が非常に高いのが特徴です。男性ホルモンの分泌は10代前半から活発になり、20~30歳でピークを迎えます。この時期の男性アスリートは、どれだけ食べても体重は減っていきます(代謝が活発)。しかし、女性ホルモンはその反対に、脂肪を同化して蓄積する作用が強く、エネルギーが蓄えやすいのが特徴です。女性ホルモンは、7歳頃から徐々に分泌し、初経を迎えると分泌量が増え、20代後半から30代にピークを迎えます。つまり、女性がアスリートとして頭角を表す10代後半から全盛期を迎える20代中盤あたりは最も女性ホルモンの分泌が多いため、脂肪がつきやすく、エネルギーを蓄えやすい時期と重なるわけです。特にジュニア期からシニア期に移行する17~19歳頃は、「練習を積んでいるのに全然体重が落ちない」、「食事に気を付けているのに体脂肪率が変わらない」と悩む女性アスリートが非常に多いですが、それはある意味、正常な生体反応であり、仕方ないことなのです。(20歳を過ぎる頃には女性ホルモンに身体が適応し、体重や体脂肪率は自然に落ちていきます。)
 しかしこの時期に、「痩せろ」や「太ってきたな」などなど、コーチから厳しい言葉を浴びせられ、落ち込んだ経験をもつ女性アスリートは多いものです。このような理不尽な仕打ちをされた女性アスリートらは、これまで出来てきたことが出来なくなったのはすべて体重増加が原因だと思い込み、ジュニア期の体重に戻そうと無理をしてしまいます。そのうち、元に戻るはずのない体重ばかりに気を取られ、勝つために練習しているのか、瘦せるために練習しているのかわからなくなり、目標を見失ってしまうことにもなりかねません。

 

3. 女性アスリート特有の健康障害

 1992年にアメリカスポーツ医学会は、①摂食障害、②無月経、③骨粗しょう症の3つの障害を、女性アスリートの三主徴(Female Athlete Triad:FAT)と定義しました。しかしながらその後、摂食障害に関係なく適切にエネルギーが確保されなければ、正常な月経や骨の健康に悪影響を及ぼす考え方から、2007年に定義が見直されました。摂食障害は除外され、①利用可能エネルギー不足(低エナジーアベイラビリティ)、②視床下部無月経、③骨粗しょう症の3つに変更されました。


① 利用可能エネルギー不足(低エナジーアベイラビリティ
 利用可能エネルギー不足の初期症状は貧血です。疲労が抜けない、息が切れる、力が出る等の貧血の徴候がみられる場合には、直ちに病院へ行き血液検査をしましょう。女性アスリートの場合は、前回の月経からそれほど日数の経たないうちにまた月経が起こる「頻発月経」や、月経の際の経血量が多くなる「過多月経」等の月経異常がある場合にも貧血に陥りやすいので注意が必要です。また、筋肉増加の際に鉄の需要が高まることに起因する貧血も見逃しやすいでしょう。

視床下部無月経
 月経は、視床下部、脳下垂体、卵巣、子宮の4つが正常に機能することで起こる。この点、視床下部無月経は、視床下部のトラブルによって無月経になる場合を指す。すなわち、その他を原因とする無月経は、アスリートの利用可能エネルギー不足とは関係がないです。アスリートの無月経のおよそ85%は視床下部無月経と言われていますが、すべての無月経視床下部にあるわけではなく、どの臓器のトラブルが原因であるのかは病院で検査しない限りかわからないため、原因をきちんと調べる必要があります。

骨粗しょう症
 人間の骨は、古い骨を壊す「吸収」と新しい骨を作る「形成」を繰り返しています。これを骨代謝と言うわけですが、この骨代謝のバランスが上手く回っていれば強い骨になり、吸収ばかり、あるいは形成ばかりが生じると骨密度は高まりません。ここで骨の吸収を抑制しているのが、女性ホルモンの「エストロゲン」です。ところが、利用可能エネルギー不足によって視床下部無月経になった女性アスリートは、骨を守ってくれるエストロゲンの分泌が著しく減少してしまい、骨の吸収が過剰に進むことで低骨密度による疲労骨折等が増えてしまうわけです。
 女性アスリートは無月経が当たり前というのは非科学的で危険な考え方です。無月経がわかった時点で、すぐに病院でその原因を明らかにし、なんらかの手立てを講じる。それが女性アスリートの大きな怪我や骨密度低下予防につながることを覚えておかなければなりません。

 

4. 女性アスリートのコーチン

 女性アスリートのコーチングは管理することであると言われていた時代もありました。しかしながら、コーチは管理者ではありません。コーチングとは、女性アスリートを支配し、管理することではありません。コーチの言う通りにやれば強くなると言って、選手の声に耳を傾けず、何も教えず、考えさせず、ただがむしゃらに練習をさせるコーチングでは、たとえ試合に勝ったとしても、ウェルビーイング(良好で幸福な状態)は得られません。
 女性アスリートのコーチングとは、女性アスリート特有の課題(身体生理的、心理社会的、組織環境的)に対して十分に配慮し、女性アスリートに寄り添い、考える時間を十分に与えることにあると言えます。そうすることで、自立した女性アスリートへと成長し、心身ともに健康で、長期的に高い競技力を継続することが可能となるでしょう。
 指導者は女性アスリート自身が些細な自らの変化に気づけるように導かなくてはならないわけです。そのために、指導者はいつも聞く習慣を持つべきでしょう。「調子はどうか」、「今どんな感じだったか」、「どう思うか」等、様々な問いかけから、女性アスリートは自分自身に目を向け、客観的に自らを評価する能力を身に付けられることでしょう。女性アスリート自身の気づきこそ、競技力向上を阻む障害に対する最大の防御策になり得ます。