メモ

以下、なんとなく考えたこと・感じたことをなるべく整理した形で文字に起こして視覚化しました。ツッコミどころ満載かと思いますので、出来たら香りだけ感じてもらって、参考程度にお願いします。それっぽく書いてあっても、今はまるっきり意見が変わってるなんてことがよくあります。人は変わるからね、

期分けの具体例について

 以下、期分けの具体例とともに、各周期でのポイントを雑記します。ただ、以下はあくまで例であり、主観に基づくポイントなので、仮に正解不正解があるとするならば、だいぶ不正解寄りなポイントも多々あるはずです。これを丸呑みするのではなく、より質の高い仮説を立てるために使ってください。

 

 

①マクロ周期

 マクロ周期を設定する際、どの試合で最高のパフォーマンスを達成したいのか、ゴールを明確化することが第一です。多くの場合は1年のうち、春季~夏季のインターハイ路線と秋季~冬季の駅伝シーズンの2つに大別できます。

 

②メゾ周期

〈秋季~春季(県高校駅伝終了後、次シーズン5月上旬の県総体をターゲットとする場合)〉

(ア) メゾ周期(X0):11月

・前マクロ周期を振り返り、良かったことや悪かったことを検討し、方策を立てます。その後、反省を踏まえて、次マクロ周期の目標を立てていきます。多くの場合、このミーティングがだれます。準備不足です。県高校駅伝を走った人が感想を言って時間が終わってしまうケースがほとんどでしょう。こうしたミーティングは、①振り返り(:事実の把握)、②分析(:課題設定)、③対策(:具体的な今後の計画)の手順を踏むとスムーズに進みます。①振り返りは事前に済ませておくことも可能でしょう。ミーティングはみんなで考える場ではなく、みんなが考えたことや今後の方針を共有してチームとして統一性を持たせていく場なので注意しましょう。考えられる工夫としては、感想や個人の目標はあらかじめ各自で考えて共有しておくこと。話し合うことがある場合、ミーティング前に前もっていくつか論点を提示するなど、筋立った進行をするための準備をしておくこと。今後の計画ないし方針はより具体的に共有すること。などが挙げられます。

・11月頭の県高校駅伝にピークを持ってきている(はずの)ため、トラックで記録を狙うのに最適な時期と言えます。ただ一方で、(身体的・精神的)疲労が限界まで溜まっているケースなど、県高校駅伝を迎える前後で調子が下降気味になってしまうことも多くあるので、思ったより記録が出ないなんてことも多くあります。この場合、各々の様子を見つつ、焦らずに1度立て直して、2学期期末明けの12月中旬~下旬の記録会に出る等の工夫をすることで、案外リフレッシュできて、これまでの貯金で走れたりすることもある印象です。

・前シーズンでの疲労を取り除くことを目的に、移行期として、2週間程度走らない期間を設けることも考えられます。研究で、1~7日のディトレーニング(練習中止)でもVO2maxはほぼ落ちないこと、10~14日で約6%、14~30日で約12%、30~63日で約20%の減少程度にとどまることがわかっています。また、週160㎞のトレーニングを1年間続けたランナーに対し、87日間練習をストップさせたダニエルズの研究で、筋力は5~10%のみの低下、呼吸系はもっと落ちてもすぐ戻ってくることがわかっています。休養も次マクロ周期へリフレッシュした状態で臨むための練習と捉えて取り組むのも一つの手でしょう。この時、2学期期末のテスト期間を移行期に代用することもあると思います。テスト期間を代用することに対しては意見が分かれるところではあると思いますが、別に大した問題ではないです。結局は程度の話なのでどっちでも良いです。

・これまで県高校駅伝に向けて練習に取り組んできた場合、特にこの時期はモチベーションの維持が一つ、焦点になります。管理や外的な動機付けが選手の行動規範の多くを占めている場合は問題ないのですが、概ね生徒自治中心で個々人の内的な動機付けを中心に動いている集団においては必ずぶつかる問題です。この点、このメゾ周期(X0)内でトレーニングを積めたか積めなかったかはそこまで重要なことでなく、また、テスト勉強が大変であることも鑑みて、臨機応変に自由度を高めた計画を立てる必要がありそうです。
 人間誰しも、モチベーションが上がらないときはあります。ただ、時間は止まって待ってくれないわけで。どうしてもモチベーションが上がらないときには、モチベーションがなくてもやるべきことがこなせる仕組みを考えること。モチベーションが高い時には、少し頑張って今まで見えなかった景色を見ようとしてみること。これの繰り返しです。

 

(イ) メゾ周期(X1):2学期期末明け~県北駅伝(2月中旬)

・いわゆる冬季練習に入っていきます。冬季練習の精度はどれだけトレーニングの目的を明確にできるかに依存します。この目的が曖昧な選手は、トレーニングも曖昧になり、練習効果の測定も曖昧で、軌道修正も曖昧になってしまうこともあります。来年出したいタイム、勝ちたい試合、それを達成するために現場の自分には何が足りないのか。それを埋めれば本当に目標は達成できるのか。またそれは自分というタイプには習得可能なものか。習得にどれだけの労力と時間がかかるのか。これらを自問しながら論理的に筋が通るところまで落とし、目的を絞り込んでいく作業が必要です。この時、目標の高さからキャパ以上かつ自己満足のトレーニングを課すケースが散見されますが、トレーニングは故障するかどうかの限界を目指して行うものではなく、あくまで絶対に故障しない限界を目指して行うものであることは注意しておく必要があります。

・冬季練習の基本的な視点としては、いかに専門種目の練習をせずに(=シーズンインしたらできない練習を通して)土台を広げていけるかにあります。春先以降で好き勝手やるために、種を植えて水をやっている段階です。この点、サーキットトレーニングやウェイトトレーニングはこの時期に取り組むべきアプローチと言えそうです。長距離選手としては、力の使い方や伝え方、地面からの反発の貰い方を習得する絶好の機会になり得るでしょう。また、これらはシーズンイン以降の怪我予防にも大いに役に立つことでしょう。
 とりわけ、速く走ったり高く遠く跳んだりする才能のあるアスリートは、そうでないアスリートよりも怪我しやすい傾向にあると言えます。全然スピードが出ない軽自動車よりも、フェラーリのようなスーパーカーの方が、運転操作を誤ったときに事故を起こすリスクが高く、また、事故を起こした時のダメージも大きいように、速く走ったり高く遠く跳んだりする才能のあるアスリートは怪我をしやすく、怪我をしたときのダメージが大きくなるリスクも高いでしょう。こういった選手ほどしっかりトレーニングして怪我をしづらい身体をつくる必要がありますが、トレーニングをしなくても速く走れたり高く遠く跳べたりすることができる、練習だけやっていればいいパフォーマンスを発揮できる、と考えてしまいがちです。だいぶ熱心に干渉してくる指導者がいる場合を除いて、強くその傾向にあると思いますので注意しましょう。

・この時期、直近に狙うべきレースがないことから、気長な心構えで腰を据えて、技術的な点ないし短所だと考える点の改善を図ることが出来ます。色々試行錯誤することができる期間でもありますので、様々なトレーニングに新しくチャレンジしてみるのも良いでしょう。この時、早くから効果を期待して急いではいけません。たとえすぐに結果が出なかったからといえ、やってきたことが間違いだったとは限りません。効果が出るまでには時間差があります。もちろん調子は少なからず上下しますし、新しく何かに取り組めば、馴染むまでにいったん競技力が下がることも全然あります。無駄なことをやってきてしまったと落ち込み、焦って行動選択を歪ませてしまう方が断然罪です。

・基本の週間サイクルは、Jog*2~4、距離系*0~1、インターバル系*0~1、サーキットトレーニング*1あたりが妥当でしょう。ただ、距離を踏むことだけに努力値を振りすぎると、速い速度帯での動きや、出力感覚を忘れてしまうイメージがあります(個人的に)。故に、この時期においても、Jogや距離系終わりに+αとして、+200m*3~5や+400m*1~3、+1000m等、スピード刺激を入れておけると、良い感触をもってスムーズに次のメゾ周期へ移行できることでしょう。

・1月末の奥むさし駅伝、2月頭の県駅伝ないし県北駅伝に向けたアプローチは、年々によって異なります。長距離ブロックとしては駅伝を大切にしたいところではありますが、無論、調整して量を極端に減らしてしまうようではいけません。出るからには思い出作りに出るのももったいないですし、せっかくなら目的意識を持って出ることが求められます。トレーニングの進行具合を計る尺度として駅伝に出る場合、どこがどうだとどうなのか。どういった目的で、どの程度駅伝に比重を置いて取り組むのかは、チームとしてあらかじめ決めておく必要があるでしょう。一般には、1月に入ってから週1程度の頻度でレースペースの速度帯付近の練習に取り組むぐらいで十分です。男子の場合は、CVペースを軸にそれなりにボリュームを確保しつつ進めていく他、変化走の上げ下げの質を高めて対応していく形が、おさまりが良い印象です。女子の場合は、駅伝で走る距離が最終的にターゲットとする種目の2~3倍以上あるというケースも多いので、それなりに駅伝に向けて合わせて計画を立てても、長期的に見て一貫性は保たれるように思います。

 

(ウ) メゾ周期(X2):県北駅伝~春休み明け

・冬季練習も後半に差し掛かり、駅伝シーズンも終わると、やや疲労がみられるケースが多くあります。この時期における最悪のケースは、これまで順調にトレーニングを積めていたのに、少し無理をすることで、怪我をしてしまうことです。温習日前後を契機に一旦、強度(・量)を下げて、基礎的な有気的能力及び技術的な点並びに短所だと思う点の改善に努めるのも良いかもしれません。

・本格的なスピードの立ち上げは3月下旬~4月頭、具体的には鴻巣記録会ないし春合宿以降からでも十分間に合います。ただ、その準備段階として、2月後半~3月前半にかけて何度か、短距離ブロックと一緒に同じ練習に取り組む機会を設けるのも良いでしょう。春先にマイルリレーを走る選手もいると思いますし。

・基本の週間サイクルは、Jog*2~3、距離系*1~2、インターバル系*1~2、サーキットトレーニング*0~1あたりが妥当でしょう。トレーニングへの適応に合わせて、トレーニングの量、強度、密度は注意深く調整し、さらなる発達を目指していきます。前メゾ周期(X1)との主な相違点は、インターバル系の比重が高まっていくにつれ、Jogの比重が低くなっていく点にあります。ただこれは、いわゆる「ポイント練習」の負荷を徐々に高めていく中で、サイクル内での優先度も自然と上がる。このとき、各ミクロ周期の総負荷量がキャパオーバーにならないように、相対的に優先度が落ちるJog等で負荷を調節していくことを指します。疲労を残し過ぎないようにしながら全体の負荷をゆっくり高めるために、有気的運動の量を徐々に減らしていく意味合いです。ただ、Jogをするにしても、ただ単に距離を稼げば良いわけではなくなってくるということで、最もリスクの低いJogを中心に、尚練習のキャパシティを広げていく意識は重要です。春休み入りすぐ、レースペース付近の速度帯で、質を過度に求めながらまわしていくようでは、トラックシーズン後半でフィットネスの貯金は尽きてしまうでしょう。あくまで春休み明け、5~6月あたりのステージを視野に取り組む場合はそれ以降まで、過度に質を求めるのは我慢するべきだと思います。いざレースペース付近の速度帯でトレーニングを始めると、案外早くレースペースに身体は馴染んでいきます。試合期と同様の練習でも目的設定が異なる例も参照。

 

(エ) メゾ周期(X3):春休み明け~県総体

・基本の週間サイクルは、Jog*2~3、距離系*1~2、インターバル系*1~2で、メゾ周期(X2)とほぼ同じくなるでしょう。ターゲットとするレースに向けて、レースで要求される専門的な体力にフォーカスして、特異的なトレーニングの頻度を増やしていきます。その中で、これまで身に付けた理想的な動きをレースペース前後の速度帯に落とし込んでいくことを目指します。また、これまでの周期を通して、各体力要因の改善がすべて同様に進むとは考え難いので、改善が遅れている体力要因を高めるトレーニングを強調し、発達のバランスを図っていくのも良いでしょう。

・レースに向けたピーキングに関しては(4.1~4.3)を参照。各選手によってターゲットとするレースは異なってくると思います。故に、自由度をそれなりに高めて練習メニューは組み、適宜疲労をモニターしながら調整していく形をとるのが、応用が利いて良いように思います。

・新入生が入り、一段と人数が増え、競技レベルの幅も広がる中で、どの程度の範囲で自由度を高め、練習メニューの匙加減を各々に任せるかは考える必要がありそうです。一般に、競技レベルが下がるほど単独で目的意識をもって追い込むのは難しい傾向にあります。この点、例えば、男子がペース走の日に女子は同ペースのインターバル系を持ってきて男女一緒に行うなど、複数人で練習をやり遂げるような形を作る工夫も一つの方法だと思います。

・とりわけ、新入生は受験期を挟み、トレーニングが中断しているケースが多いため、一気にトレーニングを再開すると怪我してしまうことがあります。故に、新入生の練習メニューの計画は慎重に行う必要があります。この点、トレーニング負荷の総量を徐々に高めたのち、その負荷の中で練習内容を調整する形が理想です。まずは走行距離を伸ばしていき、目標を達成できたら、走行距離はそのままあるいは少し減らした状態でポイント練習を適宜入れていくのが良いでしょう。トレーニング負荷を増やすタイミングと質を高めるタイミングを重ならないように気を付けることがポイントです。Jogはトレーニング負荷を低リスクで高めることができる有用な選択肢の一つです。少なくとも最初の1か月はJog(+流し)のみで十分でしょう。その後、遅めのペース走やインターバルを徐々に入れていき、本格的なスピード練習は5月末~6月頭から良いと思います。いきなりペース走やインターバルをやらせて、トレーニング負荷を稼ごうとするのは得策とは言えません。

 

〈春季~秋季(県総体終了後、次シーズン11月上旬の県高校駅伝をターゲットとする場合)〉

 基本的には、秋季~春季(県高校駅伝終了後、次シーズン5月上旬の県総体をターゲットとする場合)とほぼ同様です。特筆すべきことだけ。

(ア) メゾ周期(X0):1学期中間明け~6月末

・11月以降の取り組みについて、今一度振り返る必要があります。そこで抽出された改善点等は必ずメモをして、来年以降に引継ぐべきです。高校駅伝終わりのミーティングと同様に。

・5月上旬の県総体にピークを持ってきている(はずの)ため、また、6月後半以降になるとテストも近づき、暑さも増すことから、4月下旬~6月上旬はトラックで記録を狙うのに最適な時期と言えます。これは、県北総体または関東総体にピークを持ってきていても同様です。記録会等を上手に使いながら、目標とする専門種目の距離で上手く力を使い切れるよう、レース感覚を身に付けていけたら最高です。

・トラックシーズンに区切りをつけたのち、まずは、これまで直近で取り組んできた内容と反対の練習にフォーカスし、身体をバランスの取れたニュートラルな状態に戻すために時間をかけてあげる必要があります。おそらく、レースペース付近の速度帯の練習に比重を置いて、距離系の練習はそれほど積めていないことと思うので、ゆっくりと有機的能力の土台が作るトレーニングで距離を踏むのが良いでしょう。

 

(イ) メゾ周期(X1):1学期期末明け~県北新人

・仮に走力を最大化させる走行距離が存在すると仮定した場合、個人差はあれど、多くの場合で最適値より少ないと考えられます(3.1.6を参照)。引き続き、距離を踏んでいきましょう。ただ、あくまで手段であることは忘れないこと(3.1.7を参照)。トレーニング負荷の総量を順調に増やしていくにあたっては、ポイント練習の質は大して重要ではありません。ただし、適宜、速い動きの確認は入れておくべきでしょう。

・夏場のトレーニングは、多くのランナーにとって難しいものと思います。暑熱環境下において、疲労を残さずに充分な質と量のトレーニングをこなすことは不可能でしょう。これは体温上昇に起因して、生理学的に無理ってことなので、気合を入れればなんとかなるとか、そういう問題ではありません。競技アスリートが暑熱環境下で持久性運動を行った場合、運動中の深部体温(核心温)が約40℃になると疲労困憊で運動できなくなります。約40℃という高体温は、運動継続を制限する体温の危機的限界レベル(臨界温度)とみなされます。過度の体温上昇は、呼吸循環器系や筋代謝系、脳活動や認知機能といった中枢神経系の機能不全を起こし、運動パフォーマンスの低下、ひいては熱中症など生命を脅かすことになります。また、熱疲労と呼ばれる疲労の蓄積が速くなる、もしくは疲労がなかなか回復しない現象があり、ただ単に、単一のワークアウトにおけるタイムが遅くなるだけではなく、ペースを落として同じトレーニングをした時の疲労の回復具合に大きな差が出ることがあります。そこで、暑熱環境下でのトレーニングにおいては、特別な対策が必要とされます。
 暑熱環境下において、単純にペースダウンを余儀なくされるだけなら、ペースを落として同じトレーニング内容を組めば良いでしょう。トレーニング効果としては、そう大きく変わらないはずです。ただ、暑熱環境下では、心拍数はパフォーマンス以上に上がりやすくまた下がりにくくなる他、すぐに呼吸が苦しくなりストップしてしまうことや、無理に行っても内臓に負担がかかって食欲を失ったりして、貧血の原因になってしまうこともあります。トレーニングの内容も工夫する必要があるケースもあるでしょう。実践例としては、インターバルを数本実施したら一旦走るのをストップし、長めの休憩によって心拍を十分に落とすセット式にすることで、パフォーマンスを維持させる等が考えられます。
 特別な対策例としては、木陰に入り、輻射熱を避けること。気化熱を利用し体温を下げること。冷たい飲料を飲むこと。首筋など太い血管の付近を冷やす(血液を冷やす)こと。手掌部を冷やすこと(手掌部はラジエーターの役割を持ち血液を効率的に冷やせる)。などが挙げられます。
 また、セットインターバルの実践例としては、
・200m*4-5*2-3 [1500mRP/r200mJog R4-5’]:1500mRPで200m*4-5本*2-3set
・400m*4-5*2-3 [3kmRP/r200mJog R4-5’]:3kmRPで400m*4-5本*2-3set
・400m*3-5+300m*3-5+200m*3-5 [3kmRP+1500mRP+800-1500mRP/r200mJog R4-5’]:3kmRPで400m*3-5本, 1500mRPで300m*3-5本, 800-1500mRPで200m*3-5本
・2000m*2-3 [5kmRP/r適温に戻るまで]:5kmRPで2000m*2-3本 などが挙げられます。

・秋に入り、再びシーズンが始まると、2か月の中で、県北新人、県新人、2学期中間テスト、修学旅行、関東新人、稲稜祭、県高校駅伝と立て続けに特殊イベントが発生します。まだ落ち着いた夏休みの段階で改めて、チームとしてはどういった方針で、また、各々は何に向けて進んでいくのか確認する必要がありそうです。これは、年々によって、個性が出るところかと思います。各選手のレベルによっても、チームのレベルによっても、異なり得るでしょう。もちろん、この時、県高校駅伝に向けた目標の確認も行うべきです。
 県北新人に合わせていく場合には、少なからずお盆明け前後からは、県北新人を視野に本格的に練習を切り替ていくる必要があります。徐々に練習の質・量・密度を調節する過程は春先と同様です。あくまで県新人ないし県高校駅伝を考えているのであれば、まだまだ我慢して距離を踏んでいきたいところです。県高校駅伝を視野に県新人に合わせる場合には、県北新人明けから。県高校駅伝のみを目標にする場合には、(不安にならないのであれば)県新人明けから、本格的に切り替え始めるようで十分間に合います。もちろん、走る予定の距離によりますが(上は、8~10kmをイメージ)。

 

(ウ) メゾ周期(X2):県北新人~2学期中間

・県北新人にピークを持っていている場合、9月後半~10月前半はトラックで記録が狙いやすいタイミングと言えます。さいたま市ナイターや、大東文化大記録会、平成国際大記録会、国士館大記録会、日体大記録会など、多くの記録会が開催される時期でもありますから有用です。また、県高校駅伝のみに合わせている場合にも、記録を狙わないにしろ、高強度練習の一環として出場してみても良さそうです。県新人にピーキングしていく場合には、(4.1~4.3)を参照。

 

(エ) メゾ周期(X3):2学期中間明け~県高校駅伝

・県高校駅伝に向けたピーキングに関しても(4.1~4.3)を参照。基本的に春同様ですが、2学期中間テストがあったり、毎週のようにレースが続いたりすることから、「想定される例外的シナリオとその修正案(4.2.4.)」が参考になるでしょう。それぞれ走る距離が(おそらく)主戦場とする種目よりも長いと思います。しかし、ピーキングのメカニズムにおいては変わりません。距離が伸びても基本はトレーニング負荷の減少率をそのままに、疲労度等を考慮しながら、臨機応変に対応していくことが求められます。この点、少なくとも、①県北新人に合わせたのち県高校駅伝に合わせたグループ、②県高校駅伝を視野に県新人(ないし関東新人)に合わせたグループ、③県高校駅伝に直接合わせたグループが存在し得、その中にもレベル差は多少なり存在するので、一概にバランスをとるのは難しいでしょう。ただ、このメゾ周期(X3)に入る前までにトレーニング負荷の総量を減らし過ぎていさえしなければ、取り立てて心配するほどのことではありません。

トレーニングを始めるにあたってやっておくべきこと

〈前提〉
 勝つために必要な能力(ゴール)をいくつかの要素に分類し、具体的数値として可視化して、現状でそれらの要素がどの程度レベルにあるか(スタート)を定量化せずにトレーニングを始めることは、正気の沙汰ではありません。スポーツとは、選択肢を探り、組み合わせ、勝利確率を上げるものと言えます。スポーツで成功するために必要なのはチョイス、選択すること。また、より良い選択をするために自分自身をよく知ること。そして、自分がどこにたどり着きたいのか知ることが求められます。

 

 

目標を立てよう(ゴールの明確化)

1. 目標設定の種類

 とにもかくにも、まず、明確な目標を設定する必要があります。トレーニングの目的をいかに明確に設定できるかにおいて、トレーニングの精度は大きく変化します。ゴールを決めなければ、トレーニングは目的の欠くものになってしまうでしょう。目標設定の質を高めることで競技力向上を後押しすることができますし、目標設定の質が悪いために競技力が向上していないこともあります。前提として、目標達成した場合に勝利条件に近づくように設定されなければならなりません。当たり前のように聞こえますが、本来目指すべき勝利条件からずれているものや、ときに遠ざかるものが目標に置かれることがあります。このように設定してしまうと頑張っても意味がない、あるいは、頑張れば頑張るほどむしろ勝利から遠ざかるということが起こり得ます。
 目標をよく観察していると、2種類あることに気づきます。

① ターゲットとしての目標
 ターゲットとしての目標は、本当にそれを達成するために設定します。この目標は達成を具体的に目指しているものなので、必ず逐一、振り返らなければなりません。ここで重要なのは、仮にうまくいっても振り返り分析することです。目標設定は持っている情報から予測したものであり、もし上振れしたとしても予想が間違えているという点では下振れと変わりません。

② 願望としての目標
 願望としての目標は、原因を仮に探しても、そもそもの目標が高すぎたからということにしかなりません。このような目標は、自らを鼓舞し指針表明をするのが主目的なので、厳密に戦略を立ててそれを達成する想定でいるという性質のものではありません。


 ①ターゲットとしての目標と②願望としての目標の違いを分かっていれば問題は起きませんが、違いがわからなくなると、大変な歪みが生じることになります。以下、目標達成に向けて戦略を練っていきますが、②願望としての目標は現状から出発していないので、つじつまが合っておらず、当然たくさん矛盾が生まれてきます。故に、①ターゲットとしての目標を前提に話を進めていきます。
 目標が持っている要素には、(ア)難易度と(イ)状態と(ウ)期間があります。
(ア) 難易度:どの程度難しいか。
(イ) 状態:具体的にどのような状態を目指すのか。
(ウ) 期間:いつそれを達成するのか。
 以上の要素は明確化させておく必要があるでしょう。
 その後、目標達成への方向性を定めていきます。目標達成のために必要な要素をいくつかに分類して分析し、具体的な数値として数値化する必要があるわけです。テストに向けて過去問を探すように、まずは敵を知りましょう。目標とするレースがイーブンペースで回るものなのか、ラストの競り合いが肝となるものなのかでも、目標達成に向けた必要な要素も幾分か変わってくることでしょう。

 

2. 目標設定のプロセス

 そもそも、目標設定にあたるプロセスについては2通りが考えられます。

トップダウン:目標から逆算して練習内容を決める感じ。
ボトムアップ:現状を基準に練習を積み上げていく感じ。

 ほとんどの人がトップダウンの目標設定を行なっていて、また、ある程度上手くやって来れているのだと思います。しかしながら、それはそれだけの能力があったからに尽きます。実際にそれのみです。それを踏まえると、トップダウンの目標設定には注意点が2つあることがわかります。

①強化にかかる時間がわからない。
 目標地点に対して、いくら最適な戦略を立てたところで達成に1年かかるのに、3ヶ月で計画しても頓挫するのは当然です。
②目標地点が自分の能力で到達可能なのかわからない。
 誰でも無限に速く走れるわけではなく、それぞれどこかに固有の限界点があります。仮に限界点が5km15'00"の選手が5km13'00"を目標にしても頓挫するのは当然です。
 

 以上、必要な到達期間がわからない、かつ目標地点が届き得る範囲内なのかどうかもわからないトップダウンの目標設定は難しいものです。
 一方で、例えば、故障明けから以前の水準に戻す場合。到達地点が保障されていて、時間も比較的十分に取れる場合。標準記録等上から目標設定が避けようもなく降ってくる場合も多くあります。また、モチベーション維持に不安がある選手には、トップダウンで先行きをわかりやすく示した方がモチベーション向上に繋がりやすい印象です。

 

3. 駅伝に向けた目標設定のプロセス

 以上を踏まえ、如何にして駅伝の目標設定にあたるべきかについてです。
 Whoについては選手自身に限ります。
 Whenについては早ければ早い方が良いでしょう。先行きをわかりやすく前もって示した方が、モチベーション向上に繋がりやすいからです。
 Howについては、もちろん、話し合いになるでしょう。おそらく、想定される選手の予想タイムを足して予想ゴールタイムを目標にするのが普通でしょう。これは各選手がトップダウンで目標を決めている例です。
 もし、ボトムアップで駅伝の目標を決めるのであれば、Whenにおける早ければ早いほど良いという前提条件は崩れます。もし明日駅伝があったとしたら誰が何区を走ることになるか、もし走ったらどれくらいかを計算して合計タイムを出す。これを定期的に繰り返す。調整期間に入り、ある程度選手も区間配置も予想タイムも決まったところで最終的な目標タイムを出す。これはこれで新しい形と言えそうです。
 駅伝での目標設定をトップダウンで正しく行うためには、各選手がトップダウンで正しく目標設定出来ていなければなりません。駅伝に限ったことではありませんが、目標は数値化あるいは可視化させた方が良いでしょう。また、それはチーム全体で共有した方が良いです。誰がどれくらいで走れるのかはチームとして知っていなければならないし、どれくらいで走るつもりでいるのかも把握していた方が良いです。練習においても、試合においても、「この人がこのくらいだから私はこのくらいでは走れる!」みたいに参考になることでしょう。また、もし練習状況から想定される目標タイムと選手自身が立てた目標タイムが大きくかけ離れている場合は、素直に指摘出来る環境を作るべきです。主観と客観を擦り合わせるのは思っている以上に難しいため、そういった点で、他人からの客観的な評価は貴重であると言えます。

 

現状を把握しよう(現状の明確化)

 続いて、現状のリソースを確認します。トレーニングの環境や費やせるものや時間など資源がどれだけあるか、目標としているものはどこにあるか、そして現状どの位置にあるのか、正確に把握することが重要です。現状、目標達成のための要素がどの程度のレベルにあるのかを定量化していく際には、様々な視点・指標から現状を把握する必要があります。現状を把握して目標とする各能力の数値を見ると、すでにクリアできているものからできていないものまであるでしょう。仮に、目標達成に必要な各能力を100点満点として、現状80点のものを10点上げるにはかなりの努力が必要ですが、40点のものを10点上げる際にはそれほどの努力は必要とされません。また、80点のものはあと20点しか上げられませんが、40点の場合にはあと60点上げる余地があります。そういう意味で、現状の達成度と目標を把握して、正しいアプローチを選択していくことが求められます。
 例えば、(全力で)手でグーとパーを繰り返す運動では、時間とともにグーパーできる速度を維持できなくなりますが、主観強度はさほど高くはありません。それは供給できる酸素に対し消費する筋肉が少ないからだと考えられます。この点、何がボトルネックとなって出力が落ちているかによってトレーニング戦略が異なります。もし、もっと長く、(全力で)手でグーとパーを繰り返せるようになりたいと思ったとき、心肺機能にアプローチする人は少ないでしょう。現状の課題と的外れなトレーニングとはそういうことを必死にやっているということです。

 

レーニングプログラムの枠組みを考えよう(期分け)

1. 各周期の概要

 最終的な目標を決めたのち、それに沿った中間目標(短期目標)を設定します。その際、各目標に合わせて期分け(ピリオダイゼーション)をしていきます。期分け(ピリオダイゼーション)とは、最も重要なレースに調子のピークを持っていくために時期によってトレーニングの内容を変化させる手法のことを指します。まずは最終的な目標を決め、そしてそれに向けてマクロ周期全体の概要を決めます。その後、それぞれのメゾ周期やミクロ周期での狙いを考えていきましょう。

 

①マクロ周期
 マクロ周期とは、最高のパフォーマンスを達成するために設定するかなり長い期間のトレーニング周期を指します。マクロ周期は、一般的におよそ1年の期間を要しますが、学生の場合、1年に2回(春季と秋季)のマクロ周期があることも多いでしょう。

②メゾ周期
 マクロ周期はいくつかのより短いトレーニング周期であるメゾ周期に分けられます。メゾ周期とは、数週間から数か月続き、一般的にそれ以前のメゾ周期やそれに続くメゾ周期とは違った独自の狙いを持ちます。それぞれのメゾ周期の長さは、種目の特性や選手の状態、費やすことのできる時間によって変えることが可能です。また、各サイクルに重きを置くべき狙いを定めたのち、当該サイクルにおいてはその狙いのみを行えば良いというわけではありません。サイクルの段階が進行しても、前サイクルで重きを置いたトレーニングを適度に混在させていくべきです。そうすることで、前サイクルで獲得した能力を維持しつつ、新たな能力を獲得していくことができるわけです。

③ミクロ周期
 上のメゾ周期は、少なくとも1つのミクロ周期からなります。ミクロ周期とは、わずか2週間程度の期間を指します。メゾ周期同様、一般的にミクロ周期は、前後のミクロ周期とは異なった独自の狙いを持ちます。

 

2. 期分けのパターン①(「直線型期分け」)

 従来の期分けの典型的なパターンは、アーサーリディアードのトレーニングに端を発している「直線型期分け」です。これはすなわち、基礎構築期に弱い強度でたくさんの距離を走り込み、試合が近づくにつれ練習量を少なし、強度を強くしていくというものです。これを理解するためには、リディアードシステムについて知っておく必要があるため、少し脱線します。
 リディアードシステムは、非常に単純な運動生理学の原則について基づいています。以下、小難しい説明は一切省いて、簡単に解説していきます。人間の代謝システムにはそれぞれ、代謝が速く持続性がないものから、代謝が遅く持続性のあるものまで順番に、①クレアチンリン酸系、②無機的解糖系、③有機的解糖系、④有機的脂肪分解系の4種類あります。①と②は酸素を使わずにエネルギー代謝するため、①と②でエネルギーを作る高強度運動のことを無酸素(系)運動と言ったりします。これはあくまで、細胞内でのエネルギー代謝において酸素を使わずにエネルギーを作っているという意味です。
 リディアードは著書の中で、インターバルトレーニングには即効性があること、また、インターバルトレーニングなしに結果を出すことは難しいことを述べています。一方で同時に、インターバルトレーニングはオーバートレーニングや故障のリスクが高まること、即効性はあるもののすぐにトレーニング効果が頭打ちになることを指摘しています。ではなぜ、インターバルトレーニングの効果がすぐに頭打ちになると考えたのか。1つの根拠としては、人間の体が抱えられる酸素負債の量が15L~20Lに決まっているからということが挙げられます。あるペースで走ったとき、いかに酸素負債を抱えるかは最大酸素摂取量(VO2max)に依存します。(最大酸素摂取量(VO2max)については先述済み。)
 例えば、Aさんの除脂肪体重が60㎏で、最大酸素摂取量(VO2max)が1分当たり4Lだとしましょう。最大酸素摂取量(VO2max)とは、どれだけ有気的代謝を使ってエネルギーを作れるかを示す指標であり、最大酸素摂取量(VO2max)が1分当たり4Lと言うのは、1分間に最大4Lの酸素を使ってエネルギー代謝が出来るという意味です。この時3:00/kmで1km走ったとき、Aさんが必要とするエネルギー量は、有気的代謝だけでエネルギーを賄うとした場合には酸素5リットル分に該当します。しかし、Aさんの最大酸素摂取量(VO2max)は1分当たり4Lなので、毎分1L分の酸素負債を抱えることになります。この有気的代謝で補えない分のエネルギーは無気的代謝によって賄われます。このケース、仮にAさんがこのまま5000m走り切ったときには、15L分の酸素負債を抱えることになります。もしAさんの抱えられる酸素負債の先天的な限界値が15Lであれば、これ以上無気的代謝を向上させることは出来ないため、有気的代謝を向上させることでしか競技力は向上できません。遺伝的に抱えられる酸素負債の量が人より多くても20リットル程度までしか増やせないため、向上はそこまで見込めません。一方で、有気的代謝の向上にはかなりの余地があります。これは、高校時代の5000mのレースペースで、社会人になったらハーフマラソンを走り切れるようにまでなったというケースが頻繁に見られることからも、容易に想像できると思います。すなわち、高校時代は3:00/kmで走れば毎分1Lの酸素負債を抱えていましたが、有気的代謝の向上により酸素負債を一切抱えずに走れるようになったという理屈です。実際にはその他、多様な要素が考えられますが、以上の説明により、有機代謝に主眼を置くという流れになるわけです。
 一定程度のペースで長い距離を走りこむことによって、毛細血管やミトコンドリア、心筋を発達させ、最大酸素摂取量(VO2max)を向上させる土台を作る。これがリディアードシステムの根幹となる考え方です。
 有酸素能力の向上のために、週100マイルの走り込みを行うのが、リディアードシステムの大きな特徴です。この100マイルの走り込みは、決してゆったりとしたペースではなく、疲れ切ってしまわない程度に速いペースです。具体的なペースについては、自分の体の感覚に従って決めるべきだと言っています。トレーニングの目的はトレーニング刺激に対する体の適応を引き起こし、能力を向上させることになるため、この目的を達成するには体の感覚に従って、トレーニングするのが最も正確だということでしょう。
 前置きが長くなりました。「直線型期分け」について。リディアードは、シーズン全体としては、まず長い距離の走り込みを積み重ね、有酸素土台を作る時期があり、そこからスピードトレーニングに移行するためのヒルレーニングの時期があり、インターバルトレーニングの時期があり、タイムトライアルを含む調整期があり、そしてレース期があるという形でトラックレースにも半年くらいかけて仕上げていきます。基本的なガイドラインには、最低3か月の走り込みを経てから、4週間のヒルレーニング、4週間の無酸素トレーニング・スピードトレーニング、6週間の調整期を経てレースへと入るとあります。
 トレーニングプログラムを運用していくにあたって、リディアードは、多くの選手やコーチが最高の結果を出すために時間をかけて仕上げていく忍耐に欠けると指摘しています。シーズン前半に早く低く仕上げ過ぎて、シーズン後半で得られるはずだった最高の結果を逃してしまうことが多いと。また、仮に、目標とするレースで失敗したとしても、次の目標とするレースまで半年かけて忍耐強くトレーニングする必要がありますが、若い選手の中には失敗を取り返そうと目先のレースに心を奪われ、もう一度半年かけて準備する我慢が出来ないと、言っています。

*タイムトライアル:
 リディアードは、有酸素ランニングで有気的代謝を高める、インターバルトレーニングで無気的代謝とスピードを高める、これだけでは不十分だと考え、最後にこれらを統合し、レースに向けて調整するタイムトライアルの必要性を説明しています。人間の体は基本、同じ動きを繰り返しているとその動きを効率よくするという特徴があります。有酸素ランニングはレースよりも遅く長く走りますし、インターバルトレーニングは休憩を挟んで短い距離を速く走ります。しかしながら、レースは休憩をはさまずに速く走る必要があるわけです。
 注意が必要なのは、ここで言うタイムトライアルは全力で走る練習を指すわけではないということです。ここでは、一定のペースで自らコントロールできるペースで速く走る練習を指しています。距離も目標とするレース距離の半分程度です。レースの距離の半分をレースペース程度でリラックスして走り体にその感覚を覚えこませ、レースに仕上げていくという感覚で捉えてもらえばと思います。

 

3. 期分けのパターン②(「漏斗型期分け」)

 その他、有力な期分けのパターンとしては、レナートカノーヴァに代表される「漏斗型期分け」があります。これはすなわち、トレーニングにスピードと持久力の2つの軸を設け、トレーニングの時期が進行していくにつれ両軸を融合させ、狙いとしたレースに必要な持久力とスピードを獲得するというものです。基礎構築期に、弱い強度での長時間のランニングで持久力を鍛えることと並行して、最大出力でのランニングでスピードを鍛えていきます。その後、試合が近づくにつれ、持久力、スピードを鍛える両トレーニングのスピードを、狙いとしたレースのペースに接近させていきます。また、練習量に関しては、トレーニングが進行していくにつれ増加させ、前試合期をピークに、試合期にかけ減少させていきます。このようにすることで、トレーニング全期間にわたって、高い速筋の動員率が維持され、潜在的なスピードを常に発揮できる状態になるため、トレーニングの効率が向上するという仕組みです。1つのシーズンで狙う試合が複数ある場合等には、有効な期分けのパターンでしょう。
 どちらも、特定の走速度(ほぼレースペース)をレースの時間だけ持続させることを目指す点で共通しています。一方、そのプロセスに関して、リディアードは有酸素ベース→筋持久力と基礎を作ってからインターバルでこれらを融合させ、TTで特異的な仕上げに入るのに対して、カノーヴァは期分けが進む過程でこの特定のペースでだんだん持続できる方向性へとシフトしていく点で差異があると言えそうです。

調整期間について

 

調整~レース本番

1. レースに出る

 先述の通り、ピーキングにあたっては一般に、練習量を落としていくことになります。しかしながら、試合期に出場するするすべてのレースで自己ベストを狙っていては、特に試合期後半には、それ以前のメゾ周期から貯めてきた有酸素ベースは底をつき、ピークアウトの一途を辿ることになるでしょう。
 とりわけ試合期にかけては、トレーニングの進行具合を計るためにレースに出たり、中々普段では行えない高強度練習の一環としてレースに出たりなど、多くのレースを走ることになるかもしれません。(賛否はあると思いますが、たくさん出ときたい気持ちもわからなくはないので、好きにしたらって印象。)この時、大事なのは、テーマをもってレースを走ることです。このレースを通して何を得たいのか、そのためにレースに至るまであるいはレース中どどうしていくのか、またレース後、何を学びどう活かしていくのかは常に問い続ける必要があります。レース感覚を身に付けたいからといって安易にレースに出ても、ただ走って休日一日使っただけってことになってしまいかねません。
 もしかしたら、ターゲットとするレースに向けた高強度練習の一環として、ピーキングせずにレースに出場したら、案外タイムが遅くて落ち込んじゃった、なんてこともあるかもしれません。これはレースに限らず、レース数日前の練習が上手くいかずに自信を無くしちゃった、ってケースも良くあります。もちろん逆に、思った以上に良くて気分が上がることもあるでしょう。これは結果がシビアに数字として出る競技特性上、仕方ないことです。この時、今までやってきたことの全体に目を向ければ、「ちょっと疲れがたまってきたかな」とか、「レースに向けてもう少し練習を調整してみよう」などというような柔軟な考えが生まれるはずですが、物事が上手くいくとき、いかないときほど一瞬の感情で物事を判断しがちになってしまうものです。調子は少なからず上下しますし、それまでに積み上げてきたものが大事な競技なので、割り切ること時には大切です。合理的に分析したのち、次へと活かしていきましょう。

 

2. 特異性の高い練習

 試合期では、ターゲットとするレースに向け、特異性の高い練習の頻度を高め、統合を図っていきます。この点、同種目のレースに出場してみるというのは、最も特異的なアプローチと言えます。ただ、目標とするレースがイーブンペースで回るレースだけとは限りません。例えば上が繋がっている選手権など、一定の順位以上を目指すことに価値があるレースでは、ラストの競り合いで勝負が決まることが多いでしょう。その時は、そうした特殊なレースで勝つために必要な要素に対し、また新たにアプローチしていく特異性の高い練習が必要でしょう。
 以下、各種目の各パターンをさらうのは難しいため、1つの例として1500m走を取り上げます。
1500m走は強度の高い有酸素性の種目であるのと同時に、スピードと無酸素性エネルギー供給にも大きく依存します。およそ好気的代謝が20%、嫌気的代謝が80%あたりになると言われていますが、実際のレースでは、大きな集団を形成したままレースが進み、ラストスパートによって勝敗が決するケースも多いです。 1500m走で必要となる能力については、レースパターンによって異なってくると言われています。この点、肌感覚でもなんとなくわかるような気がするんじゃないかと思います。

・イーブンペースに近い進行:①ランニングエコノミー 、 ②vVO2peak(VO2peakでの走速度)
・前半抑えて入ってラストの叩き合い:①速筋線維割合、②最大酸素借(酸素負債)、③vVO2peak

*「最大酸素借」(酸素負債):
 そのほとんどが運動中、筋において過剰産生され蓄積した乳酸を酸化して水と二酸化炭素代謝するため運動後に取り込まれる酸素であり、その運動時に増加する乳酸は有酸素性機構で補いきれないエネルギー需要を無酸素性機構が代償するときの解糖系の代謝産物であるため、無酸素性エネルギー供給能力を表す一般的な指標。

 

 まず、どちらのレースパターンにおいても、vVO2peakを高めることが求められます。すなわち、これ以上はしんどいなって思うペースが速ければ速いほど良いよねってことです。仮に4’00”を目指す場合、66”/周でこれ以上はしんどいと思っていては62~64”/周でしんどいかもと思う人には勝てません。62~64”/周でいかに力を使わずに残せるか、62~64”/周の余裕度をいかに上げていけるか、が大事みたいな表現の方が分かりやすいかもしれません。故に、複数のアプローチが考えられると思いますが、一番シンプルなのはレースペース付近の練習を積んで、その速度帯で約4周できるよう身体を最適化させていくことです。300m*5*2や500m*6、600m*5、800m*4、1200m*2など分割した形で馴染ませていくことが一つ、明快な方法でしょう。これはラストスパートを高めるためにも必要なことです。どんなに高性能な車でもアクセル全開でずっと行けるわけではありません。ここぞというときに強いアクセルを踏めるようには力を溜めることが重要で、最後まで足をしっかり残すことができれば、ラストスパート勝負でも勝てることを意味しています。
 一方で、前半抑えて入ってラストの叩き合いで勝負が決まるレースにおいては、イーブンペース近く進行するレースにはあまり影響の少ない、速筋線維割合と最大酸素借(酸素負債)の能力が必要とされます。
 まずは速筋線維割合について簡単に。筋肉は無数の筋細胞(線維)によって構成されており、その筋線維は大きく速筋線維と遅筋線維の2種類に分類することができます。名前の通り、速筋線維は速いスピードで収縮する筋肉で発揮する力も大きいですが、大きな力を長時間発揮し続けることはできません。対して、遅筋線維は収縮するスピードは遅く、発揮する力も小さいですが、力を長時間発揮し続けることができます。そんな筋線維が私たちの筋肉には混在しているのですが、その数の構成比は筋肉の種類や、個人によっても異なります。そして、この構成比は先天性のものでトレーニングによってはほぼ変えられないという見方が多いです。(近年、遅筋線維と速筋線維の組成をトレーニングによって変えることができるとした研究あり。)中間筋(タイプⅡa筋線維)に刺激を与えてより速筋寄りの性質を高めることはできそうですが。以上を踏まえて、速筋線維割合はと言うと、どれくらい短距離が速いかみたいな把握で良いと思います。ラストスパートで勝つためには当然、絶対的なスピードが必要な要素だよねってことです。ただ、あくまで必要条件で、十分条件とはなり得ないことも大切です。
 次に、最大酸素借(酸素負債)へのアプローチです。最大酸素借(酸素負債)については上を参照。基本的には、酸素負債しながらラストスパートをかける状況を意図的に作ることが大事です。特に長距離選手の多くは、リミットを外した切り替え方が甘い傾向にあります。できる限りラストスパート段階までの再現性を高め、切り替え方を学ぶことが最大酸素借(酸素負債)を高めるアプローチだと言えるでしょう。[800~1200m(2:50/km~3:00/km)-400m(free)]*2~3や、[1000m(2:40/km~2:50/km)+300m(free)]*2~3など、残した力を上手く出し切るような練習が有効です。

 

3. 刺激走

 刺激走とは、レース前日や数日前に、レースよりも短い距離をレースと同じかそれより少し早いペースで走ることを指します。長距離選手はよく1000mを入れたりします。一般的には、「調整で練習量を落として、直前に刺激を入れて体を動くようにするため」と認識されていますが、これは別にエビデンスのある話ではないように思います。おそらく、元は誰かがなんとなく始めたことが、経験知として伝承され、いまでも多くの人が取り組んでいるものだと考えられます。正直、刺激走に効果があるかはわかりません。仮に学術的に効果があるというエビデンスが発表されたとしても、個人レベルで普遍的かはわかりません(人によって効果がある人とない人とむしろ逆効果になる人がいるかもしれません)。
 ひとまず、刺激走の考え得る意味や効果を挙げます。


・神経系への刺激:スピード練習が少なくなった結果、鈍ってしまった神経系を速い動きで動員させ、レース本番でも神経系が動員できる状態にする。(1000mの速度帯でどの程度動員されるのか。短い距離の流しとの違いは何か。)
・心肺機能への刺激:量を減らしている中で、心肺機能の低下を防ぐため、心肺へ短時間負荷をかける。(Jogさえ続けていれば数日程度で心肺機能はほぼ衰えない可能性。)
・脚を「軽く」する:経験則として刺激走の翌日や翌々日に脚が軽くなるような感覚を覚える人がいる。(これは神経系の作用か。脚が「軽く」なり、かえって本番でオーバーペースになってしまう可能性。)
・過去のレースと同様の精神状態を作る:レース直前に同じ練習をすることで、いわゆるルーティンワークとして、レース本番に力を発揮できる精神状態を作る。(別に刺激走でなくても良いか。)

 この点、私は、刺激走をすることでいいイメージが持てたり、レースに前向きな気持ちになれたりするなら、刺激走には大きな意味があると思います。一方で、逆に刺激走をやると疲れてしまうと感じる場合はやらない方が良いでしょう。義務感だけでやっていても仕方ないので。
 仮に、本格的にタイムを狙うレースまで時間があるのなら、色々試してみるのがおすすめです。もしも、しっくりくるものがあったなら、それを毎回やってみるのもいいですし、「いまは疲れているから軽くしておこう」等、体の感覚に正直に従うというのもありだと思います。
 また、このときに重要なのは、直前に何をやろうと状況はそこまで変わらないということです。走力は長期的に積み上げてきたトレーニングに裏打ちされるものであって、短期的な調整によってパフォーマンスが極端に上がることはありません。それまでの成果を当日に発揮するための準備をすることこそが、直前期に求められることでしょう。

 

4. 調整期間の心構え

 目指すべきレースに向けて調整している以上、レースに出られなくなってしまっては本末転倒です。目的がより良い結果を残すことだとして、まずそのために絶対に外せない手段はレースに出られる状態であることであり、より良い(と考える)トレーニングを消化することは大切ですが、まずは健康かつ故障なしの状態を保つことが重要です。目的と手段を間違えないようにしましょう。
 とりわけ、先述のテーパリングは「攻めの戦略」というよりは「守りの戦略」です。すなわち、テーパリングによって積極的にパフォーマンス向上効果を狙っていくというよりは、最後の最後で失敗してやらかさないことが重要であるということです。これまで長い期間をかけてトレーニングを重ねてきた成果を、最後の数週間で台無しにしてしまわないために、失敗しないための準備をしておくという姿勢が大事です。調整期間において、トレーニング負荷を増やすべきか、減らすべきか迷った場合には、やらかさないことを最優先に考えて判断しましょう。テーパリングは奇跡を起こす魔法ではありません。

ピーキングの基本について

 

テーパリングとは

 ピーキングとは大会に向けてピークを持っていくいわゆる調整のことを指します。中でも、ピーキングの一手法としてテーパリングというものがあります。テーパリングとは、「大会前に練習量を減らすこと」です。テーパリングによるパフォーマンス向上は平均3%と言われています。これらはパフォーマンスを最大限に発揮するためには必要不可欠だと信じられているものです。テーパリングの主な効果としては、酵素の量、筋肉中のグリコーゲン貯蔵量の回復。筋肉へのダメージの回復。免疫力、筋力の向上等があります。
 テーパリングについて10人のコーチや研究者に最適な方法を聞いたら、10通りの答えが返ってくるようなもので、唯一の正解はありません。回復のスピードにも個人差がありますし。しかしながら、共通している重要な点は、「走行距離を減らしても負荷は減らさない」という点です。ただしこの点、走行距離を減らしてから負荷を落とすっていうバリエーションもあったりもします。


*「シャープニング」
 その他、シャープ二ングといった手法もあります。テーパリングは、「走行距離を大幅に減らして負荷を少し上げるもの」であるのに対して、シャープ二ングは、「走行距離をそのままか少し減らして負荷も少し下げるもの」だと定義されます。

 

テーパリングのメカニズム

1. 超回復理論

 適切なトレーニングをすると、その外的な刺激に対して身体が反応して生理学的適応が起こり、体力が向上します。このコンセプトは、目的の体力が筋力であれ、持久力であれ、柔軟性であっても基本的には同様です。そして、このコンセプトを説明する理論(モデル)として一般的に知られているのが「超回復理論」です。「超回復理論」は生理学者のハンス・セリエによって提唱された汎適応症候群(GAS)に基づいており、その考え方をトレーニングに応用したものです。
 「超回復理論」についてざっくり説明すると、まず、トレーニングをすると最初は疲労や筋肉のダメージによりpreparednessは一時的に低下します(①警告反応期)。その後、時間が経つにつれてpreparednessは次第に回復してトレーニング前のレベルにまで戻り、さらに時間が経つと、preparednessはトレーニング前のレベルよりも高いレベルに到達しますよ(超回復=②抵抗期)ってことです。
 「超回復理論」に基づいて考えると、超回復が起こっているタイミングで次のトレーニングを実施するのが重要ということになります。それを繰り返すことで、どんどんpreparednessが向上していくわけです。この点、トレーニングセッション間のインターバルが短すぎる場合には、どんどん疲労だけがたまってpreparednessは低下していくことになります。また、トレーニング後時間が経ち過ぎると超回復状態が消えてトレーニング前のレベルにpreparednessが戻ってしまうので、トレーニングセッション間のインターバルが長すぎるとpreparednessは一向に変わらないままということになります。
 「超回復理論」については、preparednessという1つのfactor(要因)が疲労・回復・超回復によりマイナス方向に動いたりプラス方向に動いたりするというシンプルな考え方になっていることから、「one-factor theory(一元論、一要因論)」と呼ばれたりします。

*汎適応症候群(GAS):
 身体が外的な刺激(ストレッサー)にどのように反応するかを説明したモデルです。身体がストレッサーを受けた時にホメオスタシスを維持するための反応として、①警告反応期(ストレッサーを受けた直後で、刺激に対する準備が出来ておらず、ネガティブな反応がみられる段階)、②抵抗期(受けたストレッサーに抵抗するため、様々な生理的調節が起こり、ストレッサーとストレス耐性が拮抗している段階)、③疲憊期(ストレッサーが強すぎたり長く続いたりすることで、対抗する力が失われ反応できなくなる段階)、の3段階に分けて説明されます。

*preparedness:
 「その時点で発揮可能な体力レベル」のことを指します。ここでは、「パフォーマンスにおける身体的なポテンシャル」にあたる意味として用いています。

 

2. フィットネス-疲労理論

 「超回復理論」が「one-factor theory(一元論、一要因論)」と呼ばれるのに対して、「フィットネス-疲労理論」は「two-factor theory(二元論、二要因論)」と呼ばれたりします。ここで登場する2つのfactor(要因)は「フィットネス」と「疲労」です。「フィットネス-疲労理論」では、トレーニングをすると「フィットネス」は向上する一方で、「疲労」は蓄積すると考えます。そして、前者はプラスの効果、後者はマイナスの効果があり、そのプラスとマイナスの合計がpreparednessとして表面に現れるとします。すなわち、「フィットネス」は向上すればするほど速く走れるし、「疲労」はなければないほど速く走れますということです。
 「フィットネス-疲労理論」の本質を理解するにあたっては、トレーニングに対して、「フィットネス」と「疲労」がどのように反応するのか、その特徴について理解しておくことが必要です。とりわけ、「急性の変化量」と「変化の速度」の特徴が重要になります。

・「フィットネス」
A) 急性の変化量:小さい。
 「フィットネス」は1回トレーニングを実施したからといえ、急激に向上するものではありません。長期間にわたって地道にトレーニングを継続することで、徐々に向上していくものです。
B) 変化の速度:ゆっくり。
 トレーニングによって向上した「フィットネス」は時間が経つとすぐ消えてしまうわけではありません。トレーニング前のレベルに戻るまでには時間がかかるので、比較的長期間にわたって持続しやすいです。

・「疲労
A) 急性の変化量:大きい。
 量の多い、また強度の高いトレーニングを実施すると、1回のトレーニングだけでも疲労は蓄積されます。
B) 変化の速度:速い。
 1回のトレーニングによって蓄積された疲労はいつまでも残っているわけではありません。時間が経つにつれ、比較的すばやく減っていきます。

 以上の特徴を踏まえて考えると、トレーニング直後は「急性の変化量」の差より、「疲労」の変化量(マイナス)が「フィットネス」の変化量(プラス)を大きく上回るため、結果として、その合計であるpreparednessはマイナスになります。これは、「フィットネス」そのものは向上しているのに、それが「疲労」によって隠されている状態です。その後、向上した「フィットネス」は少しずつ低下していきますが、「変化の速度」の差より、それ以上のスピードで「疲労」が減っていくため、preparednessはプラス方向に向かって増えていき、マイナス要因である「疲労」をプラス要因の「フィットネス」が逆転した結果、preparednessはプラスに転じて、トレーニング前のレベルを超えます。このとき、さらに時間が経過してしまうと、マイナス要因である「疲労」はほぼ取り除かれてしまうので、マイナス要因が減る作用によってpreparednessが増えることもなくなってしまいます。こんな理論(モデル)です。テーパリングによって走力が上がったようにみえるメカニズムです。

 

3. 超回復理論とフィットネス-疲労理論

 「超回復理論」と「フィットネス-疲労理論」について、preparednessの動態に着目すると良く似ています。どちらもトレーニング直後に低下し、時間経過とともにトレーニング前にまで戻り、その後トレーニング前のレベルを超え高い状態に到達し、さらに時間が経つと再びトレーニング前のレベルに戻ります。しかしながら、両者は全く異なる考え方です。どちらを信じるかによってアプローチも大きく変わります。特に顕著になるのが、テーパリングの際です。

超回復理論
 「重要な大会の数週間前に負荷の高いトレーニングを実施し、一度preparednessを低下させたうえで、その後は負荷の高いトレーニングはほとんど実施せず、疲労回復に努めることで、preparednessの超回復の山のピークをできるだけ高くしよう」という戦略になります。すなわち、preparednessを挙げるためにはその前に一度落とさなければならないと考え、負荷の高いトレーニングと思い切った休養を組み合わせ、その落とし方が大きければ大きいほど、反動によってその後の超回復も大きくなるはずだというアプローチに行きつきます。


・フィットネス-疲労理論
 「「フィットネス」をできるだけ維持しつつ疲労を減らしていこう」と考え、負荷を減らしたトレーニングを試合直前まで高い頻度で実施していくという戦略になります。負荷を減らしたトレーニングの実施によって疲労はそれほど残さずに済む他、頻度を落とさず定期的にトレーニング刺激を身体に与えておくことで、テーパリング期間中に「フィットネス」が過度に低下することを防ぐことが出来ます。
 なので、例えば、1つの大会に調整していてその大会が終わり、次の大会がすぐそこにあるためその大会に向けてまた調整しないといけない場合、またいつも通り大会後何日か休んでからいつもの通りテーパリングをしていると、「疲労」は限りなく0に近づけているため「疲労」は減少することなく、「フィットネス」のみが低下していくため、走力が上がらない、むしろタイムが遅くなることがあります。

 

想定される例外的なシナリオとその修正案

① テーパリング開始前にあまりトレーニングが積めていない

 学生アスリートで試験勉強や、怪我でトレーニングをしっかり積めなかった、その他イベントで忙しくてトレーニング量が減ってしまった等、あまりトレーニングが積めていないという状況に直面することは多々あります。この場合、テーパリング開始時においては、フィットネスは低く、疲労の蓄積も少ない状況にあると推測されます。そのような状態から、テーパリングを実施してトレーニングの負荷を徐々に減らしていったとしても、上手くpreparednessを高めていくことができないでしょう。これは、テーパリングの本質が徐々にトレーニングの負荷を減らしていくことにより、それ以前に高めておいたフィットネスをできるだけ維持しつつ、蓄積された疲労を除去していくことにありますが、トレーニングをしっかり積めていないのであれば、そもそもフィットネスは高まっていないし、取り除くだけの疲労も蓄積していないため、通常のテーパリングのメカニズムが働いて、preparednessが向上していくことは期待できないからです。

〈テーパリング計画に加えるべき修正〉

・テーパリング期間を短縮する

 そもそも疲労がそれほど蓄積していないので、普段通りのテーパリング期間を設ける必要性は小さいはずです。代わりに、テーパリング期間を短縮し、それまで通常レベルの負荷でトレーニングを継続するという選択肢が有効であると考えられます。

 

・テーパリング期間の長さは変えずに、量の減少率を小さくする

 テーパリング期間中の減少率を抑えると、テーパリングによる疲労除去効果も小さくなってしまいますが、そもそもこのシナリオにおいては取り除く必要のある疲労のレベルがそれほど高くないため、問題になる可能性は低いでしょう。また、量の減少率を抑えるということは、テーパリング期間中のトレーニング量が相対亭に増えることになるため、これによりフィットネスを維持する、あるいはフィットネスの低下速度を遅らせる効果の増大が期待されるでしょう。

 

② テーパリング開始前に通常以上の疲労が蓄積している

 予期せずにトレーニングの負荷が増えてしまった場合、標準的なテーパリングのシナリオと比較して、テーパリング開始時におけるフィットネスのレベルは少し高くなっている一方で、疲労の蓄積も通常より大きくなっていることが予測されます。


〈テーパリング計画に加えるべき修正〉

・テーパリング期間を延長する

 理屈上、疲労減少の促進につながる効果が見込まれます。しかしながらこの場合、意図せずにトレーニングの負荷が増えることで疲労が通常以上に蓄積してしまうシナリオを想定しているので、レースの日程は動かせないことから、それをあらかじめ予測してテーパリング期間を延長するという選択をすることはできないでしょう。

 

・テーパリング期間の長さは変えずに、量の減少率を大きくする

 テーパリング期間中の減少率を大きくすることで、通常よりも疲労除去効果やそのスピードを促進することができるはずです。その結果、テーパリング開始時に通常以上に疲労が蓄積しているケースにおいても、狙った試合までに疲労を除去してpreparednessを最大限に高めることができる、つまり、ピーキングを成功させる確率を高めることができると期待されます。

 

③ ピーキングのターゲットとなる重要度の高いレースが複数あり、その間が数週間しかない

 例えば、重要度の高いレースが短期間に2つある場合。仮に前半のレース(A)に向けて通常のテーパリングをそのまま実施したとしたら、Aではpreparednessはピークに達し、良いコンディションで臨めるかもしれません。しかし、後半のレース(B)に向けては短い時間しか残されていないので、再びトレーニングをし直してフィットネスを高め直し、疲労を蓄積させた状態にしておき、テーパリングを実施してpreparednessをピークに持っていく、なんてことはできません。


〈テーパリング計画に加えるべき修正〉
⇒AとBにおける相対的な重要度がどちらが高いかによって異なります。

・Aの方がBよりも相対的な重要度が高いケース

 まずは、Aに向けて通常のテーパリングを実施します。その後、Bに向けては、プラスの出力である「フィットネス」は少しずつ低下し始めていて、マイナスの出力である「疲労」はほとんど取り除かれてゼロに近い状態にあると想定されます。この点、Aに向けてのテーパリング期間中はトレーニング量が大幅に減っているわけですから、シナリオ①「テーパリング開始前にあまりトレーニングが積めていないケース」に類似しています。したがって、修正案としては、「テーパリング期間を短縮する」と「量の減少率を小さくする」という2つが考えられます。わずかな期間において、急激にトレーニング負荷を増やすことは避けなければなりません。なぜなら、フィットネスは急激に増えない一方で、疲労は急激に溜まるリスクがあるからです。そこで、疲労の急激な蓄積を避けつつ、フィットネスの微増または維持を狙う戦略が有効になるわけです。

 

・Bの方がAよりも相対的な重要度が高いケース

 まず1つに、Aを強度の高い練習として取り組み、Bに向けて通常のテーパリングを実施することが考えられます。しかしながら、多少なりともAに向けてのコンディションを調整しなければならないということもあるでしょう。この状況では、Aに向けて「ミニテーパリング」を実施してミニピークを作り、その後、Bに向けてしっかりとテーパリングして最大のピークを合わせるという方針が適切であると考えられます。「ミニテーパリング」の具体策としては、テーパリング期間を短くしたり、テーパリング期間中の量の減少率を小さく抑えたりするのが良いでしょう。この場合も同様に、Bに向けてはトレーニング量が通常レベルよりも少しだけ減ってしまうシナリオと捉えることができ、シナリオ①「テーパリング開始前にあまりトレーニングが積めていないケース」に類似しているため、、修正案としては、「テーパリング期間を短縮する」と「量の減少率を小さくする」という2つの選択肢が考えられるでしょう。この点、「Aの方がBよりも相対的な重要度が高いケース」よりもトレーニング負荷の低下の度合いはそれほど深刻ではないので、「テーパリング期間を短縮する」や「量の減少率を小さくする」といった修正の度合いも小さめに抑えた方が良いでしょう。この度合いをどのように設定するかは状況によって異なるので、テーパリング計画立案者の腕の見せ所ですね。

レペティションについて

 

レペティション(理論編)

1. ダニエルズによる分類【レペティショントレーニング(Rトレーニング)】

 RはRepetitionの略で、VO2maxの約105%~120%程度を指します。1回の練習量の上限は2分です。また、1回の練習あたりの上限は8km、あるいは週間走行距離の5%のどちらか短い方です。Rトレーニングの目的としては、「無酸素作業能向上」、「ランニングの経済性を高めること」、「スピードの向上」等が挙げられます。疾走時間と休息時間の推奨比は、1:2から1:3。最も意識すべきことは十分に体を回復させ、正しい走動作で速く走ることにあります。

 

2. レペティションの目的

 無酸素状態に近い運動を、休みを入れながら反復していきます。休みを入れなければエネルギー供給が追いつかず有酸素系がメインになりますが、無酸素系である程度エネルギー供給が追いつく時間しか連続しない運動を繰り返すことで無酸素系の持久力を養成します。有酸素系も動員されますが、短時間に大量の酸素を必要とする運動を行いますので、最大酸素摂取量の養成が主な目的となると考えられます。その他、神経系ないしランニングエコノミーの向上も見込めます。

 

3. インターバルとレペティションの違い

 結論、インターバルとレペティションに厳密な違いはありません。というより指導者によって異なります。一般的に、インターバルはある程度回復しない状態でつなぐもの、レペティションは疾走と疾走の間を完全休息でつなぐものと認識されますが、厳密に言えば完全休息というのはあり得ないわけです。例えば、ある指導者は200m*20 (リカバリー200mJog)はインターバルと、1000m*5 (リカバリー5分間完全休息)はレペティションと言うでしょう。では果たして、1600m*5 (リカバリー3分完全休息)はインターバルなのか、レペティションなのか。これはたとえ、完全休息を挟んでいるからといえ、インターバルだと言う人が多いと思います。でも中にはレペティションだという人もいるかもしれません。インターバルかレペティションかという区別の仕方はそのくらい曖昧だということです。指導者によって用語の使い方がやや違うとしか書けないので、レペティションという言葉が出てきた時には、その指導者がどういう意味で言っているのかを文脈から判断していくしかありません。

 

レペティション(実践編)

1. 短めのレペティションの組み合わせ

〈実践例〉

・150m*5-6*3 [800mRP/r50mWalk R12-15’]:800mRPで150m*5-6本(リカバリー50mWalk)*3set(リカバリー12-15分)
・(300m+250m+200m)*2 [free/r5-7’ R15-20’]:(freeで300m, r5-7分, freeで250m, r5-7分, freeで200m)*2(リカバリー15-20’)
・300m*5 [free/r300mWalk]:freeで300m*5本(リカバリー300mWalk)
・40”走*8-10 [free/r5-10’]:freeで40秒走*8-10本(リカバリー5-10分)
・400m*10 [3kmRP/r400mJog]:3kmRPで400m*10本(リカバリー400mJog)
・60”走*8-10 [free/r5-10’]:freeで60秒走*8-10本(リカバリー5-10分)
・500-800m*6-8 [1500mRP/r5-7’]:1500mRPで500-800m*6-8(リカバリー5-7分)

 

2.長めのレペティションの組み合わせ

〈実践例〉

・(1000m+300m)*2-3 [1500mRP+free/r30-40” R12-15’]:(1500mRPで1000m, r30-40秒, freeで300m)*2-3set(リカバリー12-15分)
・(400m+1200-1600m)*2-3 [1500mRP+3-5kmRP/r200mJog R12-15’]:(1500mRPで400m, r200mJog, 3-5kmRPで1200-1600m)*2-3set(リカバリー12-15分)
・2000-3000m+1000m [5kmRP+1500m-3kmRP/r10-12’]:5kmRPで2000-3000m, r10-12分, 1500m-3kmRPで1000m
・3000m+2000m+1000m [5kmRP/r12-15’, 7-10’]:5kmRPで3000m, r12-15分, 5kmRPで2000m, r7-10分, 5kmRPで1000m
・4000m*2 [10kmRP/r10-12’]:10kmRPで4000m*2set(リカバリー10-12分)

 

3. スプリントトレーニン

 真にスピードをつけるためには、無酸素的なレペティションではなく、スプリントトレーニングが重要です。良いフォームを身に付けるのに欠かせないものでしょう。厳密にはレペティションではないと思いますが、なんともくくれないのでここにきています。スプリントトレーニングではほぼ全力スピードで走るものの、距離が非常に短く、また十分に回復時間をとって行うため疲労が蓄積しにくく、インターバルトレーニングのように何日も回復期間が必要となるトレーニングとは異なります。ハードなトレーニングの前後に行っても問題無く、ロングJogで脚が重くなった翌日や、レース前日の刺激入れとしても有効です。ただし、慣れないうちは筋肉を傷めるきっかけになったり、疲れた感じが残ったりするので、急なやりすぎには注意しましょう。

〈実践例〉

・100m*10 [free/free(目安3-5’)]:100m*10本
基礎的なスピード養成。できるだけ速く、かつリラックスして走ることを意識。間は十分に空けて、呼吸を整えて行う。
・150m*5-7 [free/free(目安3-5’)]:150m*5-7本
100mより少しレベルアップした形。50m毎にマークを置き、最初の50mは流し、次の50mを800-1500mRP、最後の50mで全力と、スパートの切り替えを意識できると尚良し。間は十分に空けて、呼吸を整えて行う。
・流し。速筋線維に刺激を入れたい。どこかしらで最大努力や最大速度に達して残りを流す感覚。最初から最後まで流さずに、スプリントの意識が必要。

 

4. ウィンゲート式インターバルトレーニング

 そもそもウィンゲート式というのは、「Wingate Institute」にて開発されたウィンゲートテスト(エルゴメータで30秒間最大出力や出力の傾きを計測し、運動適応能力を測定するパフォーマンステスト)に由来します。ざっくり要約すると、30”*4-6(r3-4’)でトレーニングを行うグループと65%VO₂maxの強度で90-120分トレーニングを行うグループに分け、2週間で6セット行わせたところ、ほぼ同様の効果があったことから、時間が十分に確保できないとき等に有効だと考えられる、といった内容です。ミトコンドリアの増加がみられたということで、速筋の動員によるミトコンドリアの増加においては、なるべく速筋を多く動員する、つまりは走れるだけ速く走れば良い、そんな理屈でしょうか。
 身体の炎症度合いを測定するときに用いられる「炎症性サイトカイン」と呼ばれるたんぱく質がありますが、タバタ式インターバルトレーニングやウィンゲート式インターバルトレーニング後に急激な「炎症性サイトカイン」の増加が確認さています。「炎症性サイトカイン」が高い状態にあると、痛みを発生させ怪我しやすくなるため、継続的に行う際には注意が必要です(24時間後にはトレーニング前とほぼ同値に戻ると言われていますので、慢性的に高い状態にするのは避けるべきです)。

〈実践例〉

・30”*4-6 [full/3-4’]:30秒*4-6本

 

5. 上り坂を使った練習

 上り坂を使った練習は大きく、「坂ダッシュ」と「登坂走」に分類することができます。
① 坂ダッシュ(Hill Sprint)
 上り坂を最大努力で8-10秒程度(40-60m)走るトレーニング。坂ダッシュの大きな目的の1つとしては、速筋線維を動員する能力を高めることにあります。筋線維は持久運動中、それぞれの小さな運動単位(遅筋線維)ごとにサイクルして使われていて、筋線維の全てを同時に使用しているわけではありません。この点、坂ダッシュを通して、高強度練習以外で稼働できていない速筋線維(タイプIIa線維)を刺激することに行う意義があります。トラックレースであれば、瞬発的なスプリントの局面が最後の勝負の分かれ目になりますが、普段から速筋線維にフォーカスしたような練習をしていなければ、そもそもスプリント勝負の場合の「ラストスパートで勝つ」という能力は磨けないでしょう。坂ダッシュでは臀筋群やハムストリングといった大きな筋肉を「ほぼ強制的に」使うことになるため、結果的に「体の動かし方」を学ぶことができ、フラットな場所でのスプリント(スパート練習や効率的な動きの追求)へと繋げることができます。また、坂ダッシュは最大速度よりも加速度を高めるアプローチであり、一定期間坂ダッシュで培った能力はフラットでのスプリントの最大速度を高めるのに有効であるため、平地でのスプリントの前の良い準備練習だと言えるでしょう。また、下肢を強化して爆発性を高めるだけでなく、神経筋を刺激しウェイトやプライオメトリックに似た効果をもたらすと考えられます。とりわけ、ウェイトの基礎作りからの「トレーニング効果の転移」の局面で非常に重要です。

〈実践例〉

・40-80M*4-12 [FULL/FREE(目安2-3 ‘)]:40-80M*4-12本
・100M*10 [FULL/FREE(目安3-5’)]:100M*10本
ラスト1本を200-300Mに伸ばす工夫もあり。

 主に基礎構築期に週1~2回。基本的には高負荷練習の前日(イージーな日)のJOG中もしくは終わりに導入。テンポ走等の中強度練習後に行う場合は、「高強度練習のキャパシティを高める」ことへの比重が大きい。ポイントとしては、姿勢/目線は高く保つこと。腕振りはコンパクトにピッチを出すこと。膝を持ち上げること。など

② 登坂走
 上り坂を7-8割程度の努力度で200m~数km走るトレーニング。遅筋線維(タイプⅠ筋線維)内のグリコーゲンが枯渇した際には、速筋線維(タイプⅡa筋線維:中間筋)内のグリコーゲンが使用され始めます。この点、上り坂を利用した30秒程度、または3-5分程度の登坂走ではタイプIIa筋線維を刺激することから、改善が見込めるでしょう。数kmの登坂走にまでなると、主な目的は「筋持久力の向上」へと移行していき、マラソンを含む中長距離走の基礎練習として行われます。

〈実践例〉

・30”*5-7 [free/Walkback]:30秒*5-7本
・200m*10 [free/Walkback]:200m*10本
・60”*10-12 [free/Walkback]:60秒*10-12本

 ポイントとしては、上半身の腕振り。フォームを崩さず意識しながらストライドを保つこと。(30秒以上の登坂走ではピッチを高めながら持続していくことは困難。)

インターバルについて

 

インターバル(理論編)

1. ダニエルズによる分類【インターバルトレーニング(Iトレーニング)】

 IはIntervalの略で、VO2maxの約95~100%、HRmax約97.5~100%程度を指します。1回あたりの練習量の上限は5分(安静時VO2から運動を始めるとVO2maxに達するために約2分かかるため、疾走時間は3~5分が目安です。(ある1つの身体機能を向上させるにはその機能に負荷を与えることが最も良いと考えられるため。しかし、休息の時間を短く保つことができれば、3~5分より短くても構いません。)。また、1回の練習あたりの上限は10km、あるいは週間走行距離の8%のどちらか短い方です。Iトレーニングの目的としては、「有酸素能力(VO2max)の向上」が挙げられます。
 Iトレーニングの強度はVO2max(とHRmax)か、それに極めて近い値に設定すべきであり、運動も休息もトレーニング目的を十分に達成できる比で行わなければなりません(→疾走時間が5分を超えると負荷が高すぎてしまい、5分以上の疾走を3~5kmのレースペースで何本も行うことは困難、かつ、合間に休息を長くとらないとVO2maxは完全に回復せずに次の1本ではより短い時間でVO2maxに達してしまう。)疾走時間と休息時間の推奨比は1:1から3:2の間。
 実際、100%VO2max程度の運動強度で15分程度の運動が最も効率的にミトコンドリア容量を増やすことが明らかになっています。ただ、100%VO2max程度の強度で15分間の持続的な運動を実施することは不可能に近いことから、インターバルトレーニングが有効なトレーニング方法と言われているわけです。

 

2. インターバルの目的

 LTより速いペースで走ることとジョグで休むことを繰り返します。乳酸濃度はジョグによってある程度減少するものの、十分に減少しきらない状態で次の疾走が始まることでLT付近のペース走で行うような練習をLTより速いペースで行うことができるようになります。LTより速いペースで走ることにより速筋の有酸素系持久力が効果的に養成され、酸素欠乏状態での筋活動能力の上昇を図ります。また、疾走区間を短くしたショートインターバルでは無酸素系の筋持久力、最大酸素摂取量、神経系の改善等も見込まれます。

 

3. 状況によって異なる目的設定の例

 自身の身体の状態ないし取り組む時期によって、同様のトレーニングを行うにしても、各トレーニングの目的は異なることがあります。以下、わかりやすく400m*10を例に考えていきます。

① 狙ったレースが近づいているような比較的フレッシュな状態で行う400m*10
 1本1本の疾走の精度を上げることにフォーカスします。仮に狙ったレースが近づいているのに設定タイムを下回るようであれば、そこで辞めるべきでしょう。速筋線維への刺激を入れ、レースに特異的な速度や動作を目的とし、努力感なくスピードを出す感覚やフォームが養っていきます。レースの中間走をイメージし、楽にやり過ごす動きを作ることができると良いです。

② 走り込み期のような慢性的な疲労下で行う400m*10
 全体を通してまとめることを意識します。仮に基礎期に設定タイムを下回るようであっても、気にすることはありません。疲労しやすい筋が疲れていて使えず、努力感が上がるため、レース後半局面の再現になります。疲労しにくい筋で出せる最大スピードを高めるトレーニングとして、上手く疲労をあしらいながら速度を維持することを目的にできると良いでしょう。

 

4. 1000m*5

 1000m*5 (5kmRP/r200mJog)は今もなお定番?な練習です。間はなるべく短ければ短いほど良いという認識で取り組まれることが多いです。
 しかしながら、体感的に1000m*5は、運動休息比が3:1だと5-10kmRPで、2:1だと3-5kmRPで回せる印象です。ダニエルズにおいても1:1から3:2の間が推奨されています。高強度インターバルの論文でも2:1から1:1の間を推奨するものがほとんどです。おそらく、間はなるべく短ければ短いほど良いという認識は、(集団でやる場合には、)疾走ペースが固定されている場合が多いからだと考えられます。もちろん、同じ疾走ペースで行う場合においては、間が短い方が効果は高いですが、比べるべきは1000m*5 (3:00/km/r60”)と1000m*5 (2’55”/km/r90”)でしょう。
 この点、1000m*5 (5kmRP/r200mJog)では疾走ペースが速すぎる、もしくは間が短すぎる可能性があります。持久力が未熟で5000mに慣れてない初期のみ効果があり、頭打ちになるケースが多いです。そこで、ペースは維持したまま間を伸ばす1000m*5 (5kmRP/r400m)や、ペースを落として間は維持しつつ練習全体のボリュームを増やす1000m*6-10 (10kmRP/r200mJog or 400mJog)でしっかりとした有酸素ベースを作り、試合期に強度の高い練習で仕上げていくことがおすすめです。
 また、1000m*5に限る話ではないですが、1000m*5を上手くこなす技術があり、その技術をあげることで1000m*5そのものが上達しまうケースがあります。その結果、1000m*5が出来るようになっても5000mは速くならないことが多いです。レースで強い選手ではなく、1000m*5に強い選手になってしまっては、手段が目的になってしまっており、失敗と言えるでしょう。
 客観的に見て、練習は強いのにレースで思ったほど結果が出ない選手は、原因をレースでの過緊張やプレッシャー等としがちですが、練習自体に適応してしまった、もしくはその選手にとってすごく得意な内容だったため、強く見えたとも言えます。この点、得意な練習が本当に結果を出すために必要なものか精査する必要がありそうです。

 

 

インターバル(実践編)

1. CVトレーニン

 CV(Critical Velocity=臨界速度)トレーニングと呼ばれる、最大酸素摂取量(VO2max)90%に達するペース(ほぼ10kmRP)でのインターバルは、中間筋(タイプⅡa筋線維)に刺激を与えての有酸素能力向上をもたらす(遅筋寄りの性質を高める)と言われています。最大酸素摂取量(VO2max)90%に達するペース(ほぼ10kmRP)がその効果を期待できる臨界速度ということで、CVペースと呼ばれたりもしています。5kmRPかそれ以上のハードなトレーニングでは、効果が3-4週間で頭打ちになってしまうことや、練習後のダメージ回復に時間がかかってしまうこと等のデメリットが、また、LTペースでのインターバル走はスピードが上げられないことがかえって不快に感じてしまう等のデメリットがあります。この点、10kmレースペースでのインターバルは、ダメージを減らしながら量も稼ぎつつ、なおかつスピードも刺激できるという非常にバランスがとれたトレーニングと言えます。

〈実践例〉

・1000m*6-10 [CV/r200-400mJog]:CVで1000m*6-10本(リカバリー200-400mJog)
・1400-1600m*5-8 [CV/r400mJog]:CVで1400-1600m*5-8本(リカバリー400mJog)
・2000m*3-5 [CV/r400mJog]:CVで2000m*3-5本(リカバリー400m)
・400m*12-20 [CV/r50”-60” or 200mJog]:CVで400m*12-20本(リカバリー50-60秒 or 200mJog)
・600m*8-15 [CV/r200-400mJog]:CVで600m*8-15本(リカバリー200-400mJog)

 

2. 短めのインターバルの組み合わせ

〈実践例〉

・200m*10+1000m [1500mRP/r200mJog R400mJog]:1500mRPで200m*10本(リカバリー200mJog), R400mJog, 1500RPで1000m
・(200m*2+400-600m)*4-5 [1500mRP/r走った距離]:1500mRPで(200m*2本+400m)*4-5set(リカバリー走った距離)
・300m*10-15 [5kmRP/r100mJog]:5kmRPで300m*10-15本(リカバリー100mJog)
・300m*5*2-3 [1500mRP/r100mJog R10-12’]:1500mRPで300m*5本(リカバリー100mJog)*2-3set(リカバリー10-12分)
・400m*10-12+1000-2000m [5kmRP/r200mJog R5-10’]:5kmRPで400m*10-12本(リカバリー200mJog), R5-10分, 5kmRPで1000-2000m
・400m*5*2 [3kmRP/r200mJog]:3kmRPで400m*5本(リカバリー2分)*2set(リカバリー10分)
・400m*8 [3kmRP/r200mFloat]:3kmRP付近で400m*8本(リカバリー200mFloat)*Float:勢いを残したまま速いペースでつなぐ。Ex) 3000m:9’00”。=72”/400m 72”*8 r50-54”
200m*16 [3kmRP/r100mFloat] のバリエーションもあり。
:3kmRP付近で200m*16本(リカバリー100mFloat)*Float:勢いを残したまま速いペースでつなぐ。Ex) 3000m:9’00”。=36”/200m 36”*16 r22-24”
・(400m+300m+200m)*3-5 [1500m-3kmRP/r300mJog-200mJog R400mJog]:1500m-3kmRPで(400m+300m+200m)(リカバリー300mJog-200mJog)*3-5set(リカバリー400mJog)
・(600m+400m+300m+200m)*2-3 [1500m-3kmRP/r400mJog-300mJog-200mJog R400mJog]:1500m-3kmRPで(600m+400m+300m+200m)(リカバリー400mJog-300mJog-200mJog)*2-3set(リカバリー400mJog)
,600m*10-15 [3-5kmRP/r200mJog]:3-5kmRPで600m*10-15set
・(800-1000m+300m)*3-5set [5kmRP+1500mRP/r300mJog R400mJog]:(5kmRPで800-1000m, r300mJog, 1500mRPで300m)*3-5set(リカバリー400mJog)
・(1200m+800m+400m)*2-3 [5kmRP+3kmRP+1500mRP/r400mJog R10-12’]:(5kmRPで1200m, r400mJog, 3kmRPで800m, r400mJog, 1500mRPで400m)*2-3set(リカバリー10-12分)
・(1600m+1200m+800m+400m)*2-3 [10kmRP+5kmRP+3kmRP+1500mRP/r400mJog R10-12’]:(10kmRPで1600m, r400mJog, 5kmRPで1200m, r400mJog, 3kmRPで800m, r400mJog, 1500mRPで400m)*2-3set(リカバリー10-12分)

 

3. 長めのインターバルの組み合わせ

〈実践例〉

・1000m*3 [3kmRP/r400mJog]:3kmRPで1000m*3set(リカバリー400mJog)
・1000m*5 [5kmRP/r200mJog or 400mJog]:5kmRPで1000m*5set(リカバリー200mJog or 400mJog)
・1400-1600m*3-4 [5kmRP/r400mJog]:5kmRPで1400-1600m*3-4set(リカバリー400mJog)
・2000m*3 [5kmRP/r600mJog]:5kmRPで2000m*3set(リカバリー600mJog)
・600m*3+3000m+1000m [3kmRP+5kmRP+1500mRP/r200mJog-1000mJog-1000mJog]:3kmRPで600m*3本(リカバリー200mJog), r1000mJog, 5kmRPで3000m, r1000mJog, 1500mRPで1000m
・1000m*3+6000m+1000m+400m [5kmRP+(LT+10s/km)+5kmRP+free/r200mJog-4000mJog-400mJog-400mJog]:5kmRPで1000m*3本(リカバリー200mJog), r400mJog, (LT+10s/km)で6000m, r400mJog, 5kmRPで1000m, r400mJog, 1500mRPで400m

 

4. Hランニング

 きついと感じるランニング(Hランニング)を繰り返すだけでもトレーニングになり得ます。時間を目標にHランニングを行う場合、10分~12分間レースで走り続けられると思うペースに設定します。この時、休息時間はより若干長くすると良いでしょう。

〈実践例〉

・ステップカウントダウン
 10歩(右足が着地するごとにカウント)H-runを行い、10歩jog。次に、20歩H-runと20歩jog。30歩H-runと30歩jog。それぞれ100歩になるまで10歩ずつ増やす。100歩に達した後は反対に、10歩になるまで10歩ずつ減らす。練習時間はおよそ25分間で、距離は5~6.5km程度になるはず。

ペース走について

 

ペース走(理論編)

1.ダニエルズによる分類【閾値ランニング(Tランニング)】

 TはThresholdの略(LT:Lactate Thresholdと同義)で、VO2maxの約86~88%、HRmaxの約88%~90%程度を指します。1回あたりの練習量の上限は20分、または5~20分。また、1回の練習あたりの上限は週間走行距離の10%です。Tランニングの目的としては、「血中の乳酸を除去し十分処理できる濃度に抑える能力を高めること」(持久力を向上させるため)が挙げられます。すなわち、ある程度の時間、少しだけ速めのペースで持ちこたえることを身体に覚えさせる、あるいは一定ペースを維持できる時間を伸ばすことに注力します。

 

2.ペース走の目的

① LTより遅いペース
 Jogに近い形でのランニングになります。Jogとの違いはこちらの方がペースの速いためにより効果的に持久力を養成できる反面、疲労も残りやすく、間の日の練習にはあまり適しません。レース明けのポイント練習の代わりに導入、また、故障や体調不良明けの場合につきJogからポイント練習への橋渡しとして用いることが一般的です。

 

② LT付近のペース
速筋が多く動員されることで速筋中のミトコンドリアの量が増加して有酸素系能力が養成されます。糖が分解されて乳酸が多く生成されますが、乳酸は酸化することでもう一段階エネルギーを取り出すことができるわけです。酸素を使って乳酸からエネルギーを使用する能力の他に、エネルギー源の糖を利用する能力、乳酸濃度が高い状態に耐えられる能力も養成されると考えられます。

 

ペース走(実践編)

1.テンポ走

 ペース走のすべてをLTペースで行うトレーニングです。およそ20分間続ける持続的なランニングになります。テンポ走においては、「テンポ」の解釈の違いが混乱を招くことがあります。この点、ダニエルズは、比較的楽なペースからLTペースにビルドアップしたとしても、テンポ走と言えるのはLTペースの部分のみであると指摘しています。

〈実践例〉

・6000m [LT]:LTで6000m
・20分間走:LTで20分間走
・4000m+2000m [LT+5kmRP/r7~10’]:LTで4000m, r7~10分, 5kmRPで2000m

 

2.クルーズインターバル

 持続時間が比較的短いLTペースでのランニングを、短い休息を挟みながら何回か行うトレーニングです。LTペースで3-15分間の疾走を3-10本、休息は15%-25%が一般的です。疾走時間と休息時間の推奨比は5:1あたりになります。適正な閾値強度の運動刺激をテンポ走より長い時間、身体に与えることができる点で効果的です。

〈実践例〉

・400m*20 [LT/r30”]:LTで400m*20set(リカバリー30秒 or 100mJog)
・1000m*8-10 [LT/r60”]:LTで1000m*8-10set(リカバリー1分 or 200mJog)
・1600m*4 [LT/r60”]:LTで1600m*4set(リカバリー1分)
・3200m*2 [LT/r120”]:LTで3200m*2set(リカバリー2分)

 

3.変化走

 変化走と呼ばれる練習に共通する特徴としては、「それなりのペースで走りながら回復する必要がある」ことが挙げられます。通常のインターバル走では、間をJogでつなぐため、かなり回復し、疾走区間でしっかりスピードを出すことが出来ます。一方で実際のレースでは、ペースを落として回復することはなかなかできないでしょう。そこで、速いペースで走る中で蓄積していく乳酸を、速いペースでも活用できる体を作る必要があるわけです。もちろん、一般的なLTペース走を積み重ねていくことが、そのような乳酸活用能力を引き上げるために最も一般的かつ効果的な方法であると考えられます。しかし、同じ刺激を与え続けると、適応によって練習効果が得られにくくなってしまうことが予想されます。例えば、毎週8kmペース走を繰り返していると、「レースに必要な能力が伸びる適応」以上に、「8kmペース走を効率よくこなす適応」が生じてしまうことがあります。その結果、8kmペース走のタイムは上がるのにレースのタイムはあまり伸びない、ということも起こりかねません。そこで、速いペースで走った後につなぎをそこそこのペースで回復させる変化走を通して、乳酸を出し、またそれを再利用する乳酸サイクルのシステムを強化させるという意図があります。また、同じ練習をずっと続けるとマンネリ化してしまうという問題もあるでしょう。モチベーションを高く保ちながら継続していくためには、練習メニューにもある程度バリエーションがあると良いです。この点、多様なバリエーションが考え得る変化走は有効であると言えます。
 トラック練習の場合は総距離を気持ち少なめに、緩める部分をやや遅く、きつい部分より激しく行って負荷をかけるのが適しているように思います。

〈実践例〉

LT付近の速度帯をベースにする変化走
・(400m+1200m)*5 [5-10kmRP+(LT+10-20s)]:400mの急走1200mの緩走の組み合わせ*5set
・(600-800m+600-800m)*5 [5-10kmRP+(LT+10-20s)]:600-800mの急走と600-800mの緩走の組み合わせ*5set
・(800m+800m)*5 [(LT+10s)+(LT-10s)]:LTを基準に10秒ずつの上げ下げ*5set
・(1600m+400m)*3-4 [(LT or +5-10s)+5-10kmRP]:LT付近のペース走(6-8km)の中で、1600mごとに5-10kmRP付近のペースで400mの流し

 

3-5kmRP付近の速度帯をベースにする変化走
・(400m+200m)*5 [(5kmRP-(5-10s/km))+(5kmRP+(5-10s/km))]:5kmRPより400mあたり2-4秒速い400mの急走と5kmRPより200mあたり1-2秒遅い200mの緩走の組み合わせ
Ex) 3000m:9’00”。=72s/400m *1*5
・(200m+200m)*7.5 [(3kmRP-(20s/km))+(3kmRP+(20-30s/km))]:3kmRPより200mあたり4秒速い200mの急走と3kmRPより200mあたり4-6秒遅い緩走の組み合わせ
Ex) 3000m:9’00”。=36”/200m (32”+(40”-42”))*7.5

 

4.ファルトレク

 ファルトレクというのは、語源はスカンジナビアの言葉で、ファルトとレクの二つの言葉から成り立ちます。ファルトは速度、レクはレクリエーションのレクのことだそうで、スウェーデンの方では子供がペースを上げたり下げたりする遊びがあるそうです。そんなわけで、ペースを上げたり下げたりするのがファルトレクという練習です。気の向くままにペースを上げたり、下げたりというのももちろんファルトレクの一種なのですが、通常はもう少しシステマチックに取り入れます。
 ファルトレクを取り入れるメリットとしては、主に3つ。①自分の感覚に従って走ることができる点、②不整地や起伏のあるコースでも、距離がわからないコースでも取り組むことができる点、③タイムが悪くても落ち込まなくて済む点があります。
 ファルトレクを取り入れるおすすめのタイミングは、①シーズンの序盤や故障明けでまだ体が仕上がっていないケース。練習で大切なのは、タイムではなく目的とするトレーニング刺激を体に与えることです。この観点からすると、体が仕上がっていない時点ではペースは遅くても良い練習になります。そして、何よりも、リラックスして速く走る動きを体に覚えさせることが大切です。また、まだ身体が出来上がっていない時点は、故障のリスクも高く、徐々に戻していくことが大切です。この時、不整地や起伏のあるコースでの練習は、脚筋力を戻すことにも繋がる他、故障のリスクを抑えることも出来るでしょう。距離が分からなくてもタイマーさえあればどこでもできます。
また、②想定以上に身体が疲れていると感じる、もしくは、風が強くて萎えるケースです。練習は継続が大切で、線で繋がっていれば問題ありません。むしろ一回一回のタイムは良いけど点と点でぶつ切りになっているよりもはるかに良いでしょう。そうであれば、今日は自分が思うような速さでは走れないと思ったとき、感覚に従ってオフロードでファルトレクに取り組むのも賢い選択の1つと言えそうです。
 ちなみに、逆にファルトレクが適さないタイミングとしては、レース直前が挙げられます。自らの体調を正確に知るためにも、レースの6週間前くらいからは、インターバルや変化走を好んで使っていきましょう。レースの6週間前ともなると、すでに基礎トレーニングをたくさん積んで、身体がある程度仕上がっている状態でしょう。このタイミングで1km3秒程度の遅いとなると黄色信号です。5秒以上遅いとなると赤信号です。早急に練習を軽くしないといけません。あくまでもタイムに無理やり合わせにいくのではなく、自分なりの感覚で走り、タイムとのズレを見て体調を判断していきます。この段階では、あまり適さないと言えそうです。

〈実践例〉

ケニア式ファルトレク
・(60”/60”)*20-25:60秒fast-60秒slow*20-25set
・(120”/60”)*10-15:2分fast-1分slow*10-15set
・(180”/90”)*10-12:3分fast-1分半slow*10-12set
・(30”/60”)*5+(45”/60”)*5+(60”/60”)*10+(45”/45”)*5+(30”/30”)*5 :(30秒fast-60秒slow*5set)+(45秒fast-60秒slow*5set)+(60秒fast-60秒slow*10set)+(45秒fast-45秒slow*5set)+(30秒fast-30秒slow*5set)
 とりわけ、1分以上持続するファルトレクは、10kmレースペース走に近い負荷になる事が多く、基礎期間のスピード練習としても有効。

 

オーストリア式ファルトレク
・(90”/90”)*2+(60”/60”)*4+(30”/30”)*4+(15”/15”)*4:(90秒fast-90秒slow*2set)+(60秒fast-60秒slow*4set)+(30秒fast-30秒slow*4set)+(15秒fast-15秒slow*4set)

 

ラダー式ファルトレク
・(60”-120”-180”-240”-180”-120”-60”/60”):(1分-2分-3分-4分-3分-2分-1分)fast―60秒slow

 

ピュアファルトレク
 距離走の中で、目印を目指して気ままにスプリント走を入れる。
Ex)急走と緩走を電柱ごとに切り替える等

*1:68”-70”)+(37”-38”